企業の価値観に沿って、社員が自発的に行動する組織こそが、これからの時代に生き残る。ザッポス、パタゴニアなど、優れた顧客体験を提供している米国企業の事例を紹介しながら、企業文化の構築方法を解説している1冊。


■未来企業とは
未来に羽ばたく企業（未来企業）の条件は「共に夢を見ること」だ。

①働く人と共に夢を見る
未来企業は売上や利益を超える崇高な目標を掲げ、それに共感してくれる人を集めて、その人たちの協力を得ながら目標を達成する。

②顧客と共に夢を見る
「こう生きたい」という顧客の願いを汲み、その実現に向けてひたすら価値創造する。

③社会と共に夢を見る
「こんな世界に住みたい」という未来を描き、そのビジョンに人々を巻き込んで、熱烈な支持を得るばかりでなく、新しい世界を共に創っていく。

共有の目標と価値観をもとに旗を立て、そこに働く人や顧客を集め、人々の共感を原動力としてビジネスの常識を変え、社会を変えつつある会社が頭角を現してきている。企業の持つイメージやプレステージより、その企業がどんな目標を持ち、何を信じ、どんな価値観を持って、どんな世界を創りたいと望んでいるか、それが重要視される時代が来た。

■個のサービス体験が求められる時代に必要なこと
工業主体の経済が徐々にサービス経済、そして知識経済に移行するにつれて、この仕組みに歪が出てきた。サービスの現場での成果物は形あるモノではなく、顧客体験という無形のコトであるからだ。さらにサービスの生産活動においては、常に顧客という相手がある。顧客は不均一であり、予測不可能であるため、生産にかかわる従業員に臨機応変な対応や創造性が要求される。工場の生産活動のように時間や労力だけを提供すればいいのではなく、知性や感性や個性を発揮する事が求められる。

個人の情報発信力・伝播力、ひいては社会に対する影響力が膨大なものになった結果、サービス業においても、個々の顧客体験をかたちづくる「接点」の重要性が増してきた。顧客は自分の事情やニーズに合わせて、「自分らしく」扱ってもらいたいと誰もが思っている。

そうするためには、接点に立つ人たち一人ひとりが、自ら意思決定を下し、行動できる事が必要になる。それには、会社の中のみんなが共通の価値観を持ち、その価値観を意思決定や行動の物差しとする組織づくりが必要になってくる。

■戦略的に企業文化を構築せよ
「価値観」を物差しとした意思決定や行動を促すためには、「価値観」をきちんと言葉で定義し、会社の全員で共有して、それを形にする事が必要である。「価値観」を形にしたものが「企業文化」だ。個人の力が多大になった新しい時代には、それを戦略的に定め、構築していく事が必要である。

戦略的な企業文化をつくる上では、会社の価値観を共有できる人を選抜する仕組みと、会社の価値観に則った行いに照らして人材を評価する仕組みが欠かせない。

著者 石塚 しのぶ

Dyna-Search, Inc. 代表 NASAプロジェクト関連会社であるコニックスバーグ・インストゥルメント社やその他米国企業で十年ほど経験を積んだ後、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、Dyna-Search, Inc.をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。 米国ビジネスの革新事例研究や日米間ビジネスの橋渡しを通して、夢溢れる日本の国づくりに貢献することをライフワークとしている。