デザインと消費を考える「D&DEPARTMENT PROJECT」を展開するデザイナー、ナガオカケンメイ氏による仕事論。自身の三流から始まった人生を振り返りながら、一流の考えと三流の悩みの両方を知る二流には、重要な役割があると説く。
■コンプレックスが人を伸ばす
僕はコンプレックスを持っている。最終学歴が高卒というものだ。学歴社会の中で、エリートと呼ばれる人に引け目を感じ、時には基準外と区別されるというわかりやすい扱いも受けた。高校を卒業し東京に出てきてデザイナーとして働き始めた時、僕は社会にはいろいろな序列がある事に気づいた。上司と部下、クライアントとデザイナー・・・。
どうしようもないコンプレックスの中で、学歴のある人たちと対等に渡りあるには「開き直り」が必要で、「彼らにはできないこと」を獲得するしかないと思って、そうしてきた。人を伸ばす要素の1つとして「コンプレックス」がある。他人からするとなんでそんな事に、と感じるような妙な意識やプライドが、オリジナルな発想へのこだわりと、社会でバランスをとる事を教えてくれた。
一流の人たちの言葉や情報は、素材そのままではなく、調理がされている。二流の人は、職人がつくったお寿司を食べに行って「ああ、仕事してるな」と思うように、一流の言葉を理解して味わえる。でも三流の人は、食べてみておいしいと感じるだけ。そうしておいしいかがわからず、たぶん素材がいいからだな、くらいにしか思えない。
一流の経験と三流の悩み、この2つを理解し、翻訳し、伝える事ができるのは、一流と三流を知る二流だけ。一流と三流の「世話をする」のが二流の役割とも言える。
三流は自分、二流は自分と社会、一流は社会。
二流の役割で最も重要なのは、個人的なことと社会的な事をいかに両立できるか。ビジネス的な側面からしても、文化的な側面からしても、二流の意識がしっかりしていないと、産業も文化も底上げされる事はない。
著者 ナガオカケンメイ
1965年生まれ。D&DEPARTMENT PROJECT代表 デザイナー 1989年の朝日広告賞受賞後、日本デザインセンター原デザイン研究所を経て、1997年ドローイングアンドマニュアルを設立。2000年、デザイナーが考える消費の場を追求すべく、東京・世田谷でデザインとリサイクルを融合した新事業「D&DEPARTMENT PROJECT」を開始。 2002年、大阪・南堀江に2号店を展開する。同時に、日本のものづくりの原点商品、企業だけが集まる場所としてのブランド「60VISION」(ロクマルビジョン)を開始。現在までに、カリモク、アデリアなど12社がプロジェクトに参加。 現在、地場の若い作り手とともに、日本のデザインを正しく購入できるストアインフラをイメージした「NIPPON PROJECT」を47都道府県に展開中。
日経ビジネス |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.8 | 1分 | |
第1章 僕は三流からはじまった。 | p.11 | 19分 | |
第2章 一流と三流を知る。 | p.49 | 25分 | |
第3章 ナガオカケンメイという二流。 | p.99 | 18分 | |
第4章 だから、二流でいこう。 | p.135 | 17分 | |
あとがき | p.170 | 2分 |