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2013/06/02更新

日本文化の論点 (ちくま新書)

144分

3P

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二次創作のインフラこそ輸出すべき

ニコニコ動画において「初音ミク」などのボーカロイドの楽曲や映像は日々進化を遂げている。ここではあるユーザーが投稿した動画を、別のユーザーが改変する事で洗練される、という現象が無限に連鎖するという現象が常態化している。

こうした二次創作的な消費文化なくして、現代日本のサブカルチャーの快楽を享受する事は難しい。日本のオタク系文化の「おもしろさ」を100%輸出しようとするなら、作品そのものではなく作品を楽しむ環境そのもの、コミックマーケットやニコニコ動画といったインフラを輸出しなければならない。

戦後日本が輸出に成功し、グローバルな市場を牽引した文化の多くが、本質的にはコミュニケーション様式の輸出であった。例えば「通信カラオケ」「ニコニコ動画」も二次創作的なゲームだと位置づける事ができる。情報技術の発展した今こそ、日本的想像力の本質<夜の世界>、すなわちコミュニケーション様式を創作のインフラとして「輸出」できるのではないか。

コンテンツの価値の変化

インターネットや携帯電話の普及は2つの変化をもたらしている。

①コンテンツをただ「受け取る」だけの快楽に、消費者の側が「参加する」快楽を付与した。漫画、アニメ、ゲームなどのキャラクターの「二次創作」が加速した。

②情報そのものにつく「値段」がゼロ円に近づいている。情報化の進行は、飛躍的に情報(テキスト、音楽、映像等)を供給過多にした。コピー可能なコンテンツに、お金を払う価値を感じなくなった一方、体験の価値が値上がりした。

この2つの変化は、消費者の側からコミュニケーションする快楽こそが、価値を帯びており換金可能である事を示している。例えば、AKB48は楽曲ではなく、握手という体験を売る。この変化は<昼の世界>の音楽消費から<夜の世界>への変化と言えるかもしれない。

<夜の世界>から<昼の世界>を変える

この国の古い<昼の世界>と新しい<夜の世界>のパワーバランスは圧倒的に前者に偏っている。<夜の世界>に勝っているものは目に見えない力、つまり「想像力」しかない。

<昼の世界>からは見向きもされない<夜の世界>で培われた思想と技術、ここにこの国を変えていく可能性が詰まっている。サブカルチャーのようなものにしかできないこと、想像力の必要なことにしかできないものがこの世界には確実にあり、今の日本にはそれが一番必要である。なぜなら、目に見えるものだけでは人はワクワクしないからである。