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2013/04/26更新

経営センスの論理 (新潮新書)

  • 楠木 建
  • 発刊:2013年4月
  • 総ページ数:235P

172分

9P

  • 古典的
  • トレンドの
  • 売れ筋の
  • すぐ使える
  • 学術系
  • 感動する
  • ひらめきを助ける
  • 事例が豊富な

対象読者:

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経営はすべて特殊解

一時期、「垂直統合モデルは終わり、これからは水平分業だ」という論調をよく見かけた。これほど不毛な議論もない。確かに過去のパソコン業界では、垂直統合の日本メーカーは失速した。しかし一方で、近年のIT業界では、オラクルやIBMのようにある分野で垂直統合を進めた企業が優勢になっている。個別の企業の戦略や指針を検証するのに「垂直か水平か」という切り口ではザルの目が粗すぎる。経営はどこまでいってもケースバイケース、すべては特殊解である。

ファッション業界では、SPAと呼ばれる垂直統合の戦略が台頭してきた。その元祖ともいえる企業がZARAだ。ZARAが独創的だったのは、流行を予測するのではなく、すでに流行し始めたものをいち早く取り入れて作って売れば当たる確率は高いという戦略だ。それを実践するために垂直統合を進めた。垂直とか水平とか、どっちが優れているか語っても、意味がない。その事業に固有の文脈の中で考えなくてはならないのだ。

但し、そこで読み取れるのはあくまでその会社の特殊解なので、そのままでは自分の商売に取り込む事ができない。そこから本質を抽出する作業が必要になる。多くの人は、人目を引く「ベストプラクティス」や、一撃必殺の「飛び道具」にばかり目を向ける。だから本質が掴めない。「これからはSNSを活用したマーケティング」とか「ビッグデータ」といった話が飛び道具の典型例だ。

大体、飛び道具として取りざたされるようなものは、多くの人がすでに気づいているものばかり。競争戦略の本質は「違いをつくること」にある。飛び道具や必殺技に寄りかかってしまうと、独自性や差別化がかえって殺されてしまう。

優れた経営者というのは抽象化してストーリーを理解し、その本質を見破る能力に長けている。本当の役に立つのは、個別の具体的な知識や情報よりも、本質部分で商売を支える論理なのだ。戦略構築のセンスがある人は、論理の引き出しが多く、深いものである。

抽象と具体の往復運動

ビジネスの世界では「具体」は実践的で役に立つ、「抽象」は机上の空論で役に立たない、と決めつけてしまうような風潮がある。とんでもない思い違いだ。抽象的な思考がなければ具体についての深い理解や具体的なアクションは生まれない。抽象と具体との往復運動を繰り返す、このような思考様式が最も役に立つ。

仕事は常に具体的なものである。しかし、抽象化なり論理化の力がないと、思考が具体ベタベタ、バラバラになり、目線が低く、視界が狭くなり、すぐに行き詰まってしまう。抽象度の高いレベルで事の本質を考え、それを具体のレベルに降ろした時にとるべきアクションが見えてくる。具体的な現象や結果がどんな意味を持つのかをいつも意識的に抽象レベルに引き上げて考えるのだ。