大和ハウス工業代表が、創業者からの教えをもとに、平社員から社長になるまで自らが歩んできた道を語る。業績不振の支店、債務超過寸前のグループ会社を立て直し、大和ハウス工業を1兆円企業にまで育てあげたその経営論が明かされています。
■ぬるま湯を飛び出せ
大和ハウス工業は石橋信夫オーナーが一代で築いた会社だ。「建築の工業化」を目指して鉄パイプによる建築物「パイプハウス」を考案すると、1955年に大阪市西区の事務所で大和ハウス工業を興した。工業化住宅の先駆けで現在のプレハブ住宅の原点である。
大学生の時、母親が質屋に入るのを見て、「必ず事業家になり、親孝行をする」と志を立てた。大学卒業後、経営の全プロセスを学ぶため、中小鉄鋼商社の大源に入社。しかし、鉄鋼需要も安定し、業績の良かった大源の牧歌的社風に違和感が募っていった。
勤務時間が短くて給料・ボーナスがよく、業績も安定している。大源を辞める事に周囲はみな反対した。父は「長い人生、いい事ばかりやない。しんどい時もきっとある。自分で決めなかったら働き先を勧めてくれた人を恨むようになる。武男、おまえの人生や。お前が決めたらええ」と言った。
■凡事を極める
大和ハウス工業に途中入社して49年余。会社を興して創業社長になり、上場させる夢こそかなわなかったが、形を変えて上場企業のトップになるという夢が実現した。
平凡な人間が非凡なことをなす唯一絶対の方法が「凡事徹底」だ。電話が鳴ったら1回でとる。元気よく挨拶をする。約束を守る。「凡事」を極める事で、お客様の信頼が積み重なり、やがて「非凡な成果」につながる。
■樋口武男 経営の心得
・6つの判断基準
①お客様にとって良いことか
②会社にとって良いことか
③社員にとって良いことか
④株主にとって良いことか
⑤社会にとって良いことか
⑥将来にわたって良いことか
・「人間力」を磨く五訓
①自己益を忘れ、会社益を想え
②嫌な事実、悪い情報を包み隠さず報告せよ
③勇気をもって、意見具申せよ
④自分の仕事に非ずというなかれ 自分の仕事であるといって争え
⑤決定が下ったら従い、命令はただちに実行せよ
・成功する人の12カ条
①人間的成長を求め続ける
②自信と誇りを持つ
③常に明確な目標を指向
④他人の幸福に役立ちたい
⑤良い自己訓練を習慣化
⑥失敗も成功につなげる
⑦今ここに100%全力投球
⑧自己投資を続ける
⑨何事も信じ行動する
⑩時間を有効に活用
⑪できる方法を考える
⑫可能性に挑戦し続ける
著者 樋口武男
1938年生まれ。大和ハウス工業代表取締役会長兼CEO 大学卒業後、鉄鋼商社の大源株式会社に入社。1963年大和ハウス工業入社。取締役、常務取締役、専務取締役を歴任。 1993年、債務超過寸前に陥った赤字のグループ会社、大和団地の代表取締役社長に就任。大胆な事業改革と人事戦略などで手腕を発揮し、1995年に同社を黒字転換させる。2004年4月、代表取締役会長兼CEOに就任。
日経トップリーダー |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.1 | 1分 | |
第1章 祖母の教え | p.9 | 11分 | |
第2章 ぬるま湯を飛び出せ | p.33 | 7分 | |
第3章 スパルタ式で凡事徹底 | p.47 | 19分 | |
第4章 サナギ経営と即断即決 | p.87 | 9分 | |
第5章 大企業病を退治する! | p.105 | 17分 | |
第6章 停滞は後退だ | p.141 | 11分 | |
第7章 夢に向かって | p.165 | 16分 | |
おわりに | p.199 | 2分 |