すべての作業を「人数×時間」で管理する
当時のユニクロは準社員を能力別にAからDの4つのランクに分けており、未経験者は時給900円のDランクパートから始める。現在のユニクロも基本は同じだが、準社員・アルバイト共に7段階で昇給・昇格している。Aランクパートになると、時給は1200円に達し、店舗運営のあらゆる業務において、新人店長などをはるかにしのぐ実力がある。
約10年にわたってユニクロの現場で準社員として働いていたAランクパートの杉山は、次のように語る。「仕事中はとにかく厳しい会社だよね。すべての作業が『人時』で計画されているから、これをこうやったら次はあれをやって、と常に時間に追われている」
「人時」とは、店舗内のあらゆる業務を「人数×時間」で計画し、人件費を極力抑える考え方。例えば、入荷したジーンズをダンボールから出して、畳みながら陳列する作業が「2人時だ」と言われたら、1人で2時間もしくは2人で1時間以内に終わらさなければ叱責の対象となる。
入社5年以内に8割が辞める
ユニクロという会社では、一部の強者だけが生き残る事ができて、大半の弱者は数年のうちに疲れ果てて去らざるを得ない状況に追い込まれる。社員は毎日のように毎月の予算達成を求められる。2008年9月末時点で、ユニクロ社員の平均年齢は29.3歳。30歳を迎えずに大半の社員が辞めていく結果でもある。
店舗のスクラップ&ビルドを絶え間なく行っているため、社員の異動も目まぐるしい。先輩社員から「半年に一度は異動があるから覚悟しておけよ。オレは7年間で14回も引越している」と自慢された。店舗が閉鎖される場合、社員は異動になり、準社員およびアルバイトも建前では近隣の店舗に移る事ができる。但し、店長やSVから「要らない」と判断されたスタッフには声がかからない。
徹底改善要求への即答が求められる
チェーン店では当たり前かもしれないが、ユニクロの現場にも創意工夫の自由はほとんどない。マニュアルの徹底遵守が求められる。よほど実力と実績がない店長でない限り、発言権などは認められない。
社長の柳井以下、執行役員→部長→リーダー→SVと降りてくるユニクロ店舗現場の「徹底改善要求」は尋常ではない。「できていない項目」を列挙されて、「いつまでにどうやって改善するのか」の即答を迫られ、結果報告も求められる。言い逃れも猶予も許されない。改善を先送りにすればするほど追い詰められ、部下のスタッフも離反し、居場所がなくなっていく。
柳井のいう「会社と一緒に成長していく」社員は全体の1割程度であり、彼らは幸せだろう。残り9割が幸せになれないのは自業自得で「仕方ない」のだ。