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体験の一貫性こそが重要

優れた商品・サービスを持ち、多くのプロモーション投資をしているにもかかわらず「ブランドが弱い」と嘆く企業の多くは「体験の一貫性」の重要性を見落としている。「一貫性を持って変えないこと」を軽視し、商品がモデルチェンジするたびに、印象を形成する特徴を様変わりさせてしまうケースが多い。その時々で、各接点の個別最適な施策を行うだけでは、ブランドの知覚価値が蓄積しない。

ブランドを「単なる知名度の資産」と見なすのは、よくある間違いだ。近いカテゴリの商品であるからといって、同じブランドの下に知覚価値の異なる商品を見境なくぶらさげて展開すれば、ブランドの知覚価値を破壊してしまう事になる。

従来のブランド戦略

企業のブランド戦略は、2パターンに分かれる。

①個別適応型:商品ブランドごとに異なる価値を訴求する
ex.トヨタ、P&G、ユニリーバ

②横串啓蒙型:商品ブランドを横断して共通の価値を訴求する
ex.アップル、フォルクスワーゲン、ダイソン

横串啓蒙型は、顧客層が拡がっていくにつれ、ニーズの幅も拡がり、個別適応型のブランド構造に移行する圧力が働きやすい。このため、一般的には高級品やニッチ品でなければ選択しにくいパターンであった。

ブランド戦略の進化

しかし、今、3つの環境変化がブランド戦略の進化を促している。

①技術やモノのコモディティ化により、モノだけでの差別化が難しくなった
→体験全体を高めてブランドを差別化する。今や、売らなければいけないのは製品単体でなく、購入前から利用後までの体験フローである。ex.アップル、ハーレーダビッドソン

②ネットにより生活者が情報を発信するメディアの民主化が起こり、生活者がブランド知覚を形成する重要な共創者になった
→生活者を主語にした課題や願望を協調支援するようなブランド知覚価値へ拡張する。生活者や顧客同士が交流可能なコミュニティを、ブランドが運営し支援する考え方がとられるようになった。ex.コカコーラ・パーク

③市場のグローバル化や異業種からの参入により競合が増え、ブランドの競争環境が激化した
→全体最適の視点からブランド戦略の傾斜配分を実施する。「商品群の横串となる共通要素」「メディア化する商品」「関連商品の購買につながる商品」に集中投資する事で、より大きな成果を求める。

たとえモノづくりの分野であっても、モノの価値をベースとした価値設計ではなく、生活者の体験フローをベースとした価値設計と体験の価値をいかに高めるかという事を目的に据えるべきであり、顧客にとっての体験価値を共創するパートナーを事業プロセスに取り込む「プラットフォーム」の発想が重要になる。