伝えるためだけにお金を使わない
8000万円、これがチームくまモンに与えられた予算だった。この金額は、関西の新聞に広告を出したり、テレビCMを流すには全然足りない額である。この額を2倍、3倍にも膨らむような使い方はないだろうか。チームくまモンは、小山薫堂さんの著書を読み込んだ。方向性は次の3つ。
①関西の人みんなが驚くような面白い事をすれば、自然に人は集まる
②お金を落として、そこに生まれた面白いものを関西の人が見に来る仕掛けを作る
③相乗効果でいろいろなものが絡まって広がっていく
様々な議論を経て、「大阪にふさわしい、笑いの文化をベースに、くまモンを売り出そう!そして、ブログやツイッターで、できるだけ多くの人に共有してもらおう」という事になった。
くまモン神出鬼没大作戦
最初にチームくまモンは、阪神甲子園球場にくまモンの看板を掲げる事にした。球団事務所に連絡を入れ、熱っぽく趣旨を説明すると、滅多に空きがでない看板にちょうど空きがあるとの対応。これが大阪進出への第一歩となった。
チームくまモンは、その後の大阪展開について会議を進めた。「広告業界では、商品の全容を初めから明かさず、関心を集める手法がある。大阪市内のそこかしこに身元が分からんくまモンというキャラクターが出没している、といった都市伝説みたいな話題を作って、そこそこ知れてきた頃に正体を明かす」
スタートはできるだけ熊本らしさを排除し、まず、くまモンそのものを、大阪の人気者にしようという作戦でいく事になった。大阪市中央公会堂、OCAT、道頓堀商店会など、比較的スムーズな出没を開始した。これに合わせ、くまモンのブログ「くまモン大阪出張紀行」とツイッター「55kumamon」を開設した。神出鬼没のくまモンを目撃したフォロワーとコミュニケーションを図ることで、口コミによる話題化やブログへの誘導を狙った。
くまモンが大阪で活動するにあたって考えた秘密兵器の一つが「名刺」だった。裏にくまモンのイラストとコピー、ブログ検索キーワード、QRコードを入れた32種類を用意した。名刺に書かれたコピーが笑いを誘い、1万枚の名刺配りを達成した。
「神出鬼没」スタート後、「吉本新喜劇」に出演をオファーし、全国放送された事が大きな分岐点になった。多くのメディアに取り上げられる事になり、活動7ヶ月で6億4000万円分の広告効果をあげた。
ゆるキャラから売るキャラへ
「ゆるキャラグランプリ2011」において、熊本県営業部長の肩書きを持つくまモンは、1位を獲得した。これにより、様々な食品企業から商品化の話が舞い込み始めた。平成24年1年間のくまモン関連商品の売上は293億6000万円以上。これらの商品は、本人が休んでいる間も、熊本県をアピールし続けてくれる事になった。