叱らないで育てる
「叱る」事の本来の目的は、部下を正しい方向に導くための働きかけをする事である。叱責したり、怒鳴ったりして、相手を怖がらせる必要はない。大切な事は、「自分のやり方は間違っている、直さなければ」と部下が気づき、「二度と失敗を繰り返さないようにしよう」と気持ちを改める事で、行動を改善する事である。そのためには、部下の課題に対して、問題のありかを的確に指摘し、部下の行動を変化させるようなコミュニケーションが必要になってくる。そして、部下の性格や状況をふまえて、言葉や伝え方を選ばなければならない。
「叱らない」で部下が育つ3つのステップ
①感情と事実を分ける 〜自分をコントロールする習慣をつける
上司のメッセージが正しく伝わり、部下の行動変容につなげるためには、部下に対して客観的な事実を伝える事が大切である。つまり、注意を促す際に「何が問題で、どのように改善する必要がある」という事を「事実」と「行動レベル」で示す。
ところが、実際には感情が高ぶり、怒鳴りつけたり、相手を非難するような言葉を浴びせてしまいがちである。そこで意識したいのは、感情と事実を分けて考える習慣。自分の発言は事実に基づいたものか、それとも感情から衝動的に出た言葉なのかを吟味するクセをつける。
②部下の事をよく見る 〜部下を知り、信頼関係を構築する
部下のミスや不注意を的確に指摘し、正しく導くためには、部下の事をよく知っていなくてはならない。部下の普段の状態を把握していなければ、何か問題が起きたとしても、部下にどのように指導するのが適切なのかがわからない。
部下とのコミュニケーションで気をつけたいのは、部下の話にきちんと耳を傾けること。部下との信頼関係こそが、部下を指導し、育成する際には重要である。信頼関係が築けていれば、厳しい事を伝える場合でも、関係性が壊れる事もない。大切なのは「どのように言うか」ではなく、「誰が言うか」。つまり「上司のあり方」が問われる。
③ゴールを示す 〜部下に伴走し、未来へナビゲートする
部下の改善策は、部下の問題やミスの原因を洗い出す事で、おのずと見えてくる。ミスが起こる3つの原因に照らし合わせると考えやすい。
1.「人」に由来するミス
知識やスキル不足、慣れや過信、集中力低下、コミュニケーションの不備
2.「道具」に由来するミス
使いづらい道具、煩雑すぎる手順、マニュアルがない、複雑な事務フロー
3.「環境」に由来するミス
雑然とした社内環境、残業の常態化による疲労蓄積、チームの連携不足
さらに、業務の改善策だけでなく、仕事を通じて目指したい姿などのゴールイメージを共有すること。ゴール地点と現状のギャップを客観的に指摘して、そのギャップを埋めるにはどうすべきかを一緒に考える。