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2013/04/19更新

デフレーション―“日本の慢性病"の全貌を解明する

  • 吉川 洋
  • 発刊:2013年1月
  • 総ページ数:236P

199分

15P

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マネーサプライだけでデフレは脱却できない

1990年代に日本がデフレに陥った時も、数多くの経済学者がマネーサプライを増やせと主張した。彼らの主張の根拠となったのも、貨幣数量説だ。

しかし、データを見ても、マネーサプライを十分に増やせばデフレは止まる、という考え方は支持されない。デフレの時代が始まった1990年代中頃からは、マネーサプライと消費者物価指数の動きは大きく乖離している。特に、日銀が直接影響を与える事のできるハイパワード・マネーと消費者物価指数の間の関係はほとんどない。

貨幣数量説の最大の弱点は、それが「均衡(均衡において物価水準は貨幣数量に比例する)」という命題に過ぎない事だ。この理論は、個別の物価の変化を反映した指数としての一般物価水準がどのようにして均衡水準に行き着くのか、時間経路について全く語らない。デフレにしてもインフレにしても、価格が現実の時間の流れの中でたどる道筋を反映して決まるものに他ならないのである。

デフレは原因ではなく結果である

人口減少こそデフレの根本原因だという主張がある。労働力人口の減少が経済成長にマイナスの影響を与えるのは事実だ。但し、その影響は「数量的」にははるかに小さい。先進国の経済成長は、働き手の頭数で決まるのではなく、「一人当たりの所得」の上昇を通して成長してきたのである。人口減少がそれ自体として、経済・社会問題である事はその通りだが、日本経済の長期停滞の原因ではない。

デフレは長期停滞の原因ではなく「結果」である。デフレに陥るほどの長期停滞を招来した究極の原因は、イノベーションの欠乏に他ならない。消費者の低価格志向、グローバル競争、円高の下、日本企業は一貫して「1円でも安く」コストダウンを図るべく「プロセス・イノベーション」に専心してきた。その結果、経済の成長にとって重要な、新しいモノやサービスを生み出す需要創出型の「プロダクト・イノベーション」が、おろそかになってしまった。

なぜ日本だけがデフレになったのか

日本だけがデフレになった理由は、日本だけ名目賃金が下がっているからだ。名目賃金が下がれば、多くのモノやサービスの価格に下落圧力が加わる。

バブル崩壊以降、日本企業が厳しい経営を迫られる中、「雇用か、賃金か」という選択において守られたのは「雇用」であり、代わりに90年代後半から賃金の切り下げが始まった。大企業を中心に、旧来の雇用システムが崩壊した事により、名目賃金が下がり始めたのである。

経済学者は「期待」を変えて物価や賃金の下落を止め、上がるようにすれば良いという。しかし、モノやサービスの価格や賃金の決定において、将来に対する「期待」の出番はない。なぜなら、売り手と買い手の間で将来に関する「期待」が一致する事はないからである。