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2013/04/18更新

建築家、走る

  • 隈研吾
  • 発刊:2013年2月
  • 総ページ数:222P

164分

2P

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挑戦し続ける建築家、隈研吾の自伝的建築論

世界的な建築家である隈研吾氏が、現在の建築家の置かれている立場、その中で悩み続けながらも、世界を飛び回る生活を語る。

2013年4月に新しく建替えられた歌舞伎座を手がけた中で考えたこと、バブル崩壊後、仕事を失い地方を転々としてきた日々、中国やフランスで建築を手がけるということなど、世界を飛び回る建築家の話がつまった1冊。

超短要約

■新しい建築は褒められない
歌舞伎座の平成における建て替えに声をかけられた時は、大変な栄誉だと思ったと同時に、ものすごく困難なミッションを依頼されて、正直「ヤバい」と思った。まず、歌舞伎ファンの目が怖かったし、建築設計界の目も怖かった。

歌舞伎座はモダニズム建築にしてはいけないと直感的に感じていた。モダニズム建築というのは、20世紀の工業化社会が生み出した建築スタイルで、艶っぽくない。「装飾は罪悪だ」という文言がモットーで、瓦屋根が載っただけで掟破りなのである。

さらに、困難は街に馴染んだ建築の建替えという点にもあった。昔の建物に馴染んだ人は新しい建築を絶対に褒めない、という法則がある。なぜなら、「昔のと比べるとね」とのたまって、自分の経験の深さ、厚さを、若造に見せつける事ができるからである。

20世紀的モダニズムの信奉者達からすると、建物の装飾は時代遅れに見えるようである。「四角いハコの中に、歌舞伎座の建物全部を入れた方がいいんじゃないか」という意見が、外部から寄せられた。

歌舞伎座の建物について、都市の中にある「異物性」のようなものが命だと思っていたので、ハコには絶対に入れたくなかった。ハコの一つに収められてしまったら、歌舞伎という伝統芸能と、歌舞伎というものが東京で放つ特殊性が失われてしまう。

建物ができた時に、皆からいわれる悪口については、ある程度までは割り切っている。第一、完成した時に絶賛される建築というものは、世の中にほとんどない。新しい建物とは都市の中で異物である宿命を背負う。古い歌舞伎座を見慣れている人は、年月が経た薄暗さや汚れにこそ親近感を持っているから、新しい材料で明るい照明がついただけで、「これは歌舞伎座じゃない」と拒否反応を示すだろう。

でも、それでいい。建築とはそういうものであり、都市だってそういうもの。都市を作っているのが、人間という生き物だからである。生き物とは、どんなに長い目で物を見ようとしても、結局は自分の生きられる短い時間の事しか考えられない弱い存在である。

自分の内にある、建築の理想を極めたい気持ちと、あらゆる人たちの思惑が渦巻く現実とのジレンマを乗り越えていく方法は、単純である。作っている行為自体を楽しめばいい。そのためには、世間から何を言われても「俺たちは、本当にいいものを作ろうと思ってやってきている」と、胸を張れる仲間を作る事である。

著者 隈研吾

1954年生まれ。建築家 株式会社隈研吾建築都市設計事務所主宰。日本設計、戸田建設、コロンビア大学建築・都市計画学科客員研究員を経て、1990年に隈研吾建築都市設計事務所を設立。 法政大学工学部建設工学科非常勤講師、慶應義塾大学環境情報学部特別招聘教授、慶應義塾大学理工学部客員教授、慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科教授、アメリカイリノイ大学建築学科客員教授を経て、2009年より東京大学工学部建築学科教授。 1997年「森舞台/登米町伝統芸能伝承館」で日本建築学会賞受賞、2002年「那珂川町馬頭広重美術館」をはじめとする木の建築でフィンランドよりスピリット・オブ・ネイチャー 国際木の建築賞受賞。2010年「根津美術館」で毎日芸術賞受賞。

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章の構成 / 読書指針

章名 開始 目安 重要度
悩んでいる日々を p.1 2分
第1章 世界を駆け回る p.10 21分
第2章 歌舞伎座という挑戦 p.46 14分
第3章 20世紀の建築 p.70 27分
第4章 反・20世紀 p.115 29分
第5章 災害と健築 p.164 11分
第6章 弱い建築 p.182 20分

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