行列の絶えない飲食店「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」はどのようにしてできたのか?ブックオフの創業者でもある著者が「競争優位性」の作り方を紹介。ブックオフ創業までの物語も収録された自伝的な1冊になっている。
■立ち飲み×星付きレストラン
ブックオフコーポレーションの会長を退任して、2年が過ぎた2009年に、ある人から焼き鳥屋の経営を勧められて、飲食業に入った。当初は「ものすごく難しい業界に入ってしまった」という気分だった。立ち上げた会社の一つのミッションが新規業態開発、そのポイントは、できるだけ息の長い業態をつくるために、人が考えていない事を考え出して、いかに早く飛び付く事ができるかという事だった。
超不景気だと言われる時代にもかかわらず、毎日毎晩ものすごく繁盛している業態は、立ち飲みの居酒屋、そして、ミシュランガイドの星付きレストラン。この社会現象に気付いた事が、最初の一歩だった。そこで閃いたのが「この2つをくっつけてしまえ!」だった。そして、誕生したのが「俺の◯◯」シリーズ。両方の勝ちパターンをくっつけているから、爆発しない訳がない。
■2勝10敗の事業家人生
「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」は、ビジネス人生において13戦目の事業だ。これまでの12勝について振り返ると、勝敗は2勝10敗。そのうちの1勝が中古ピアノの販売で、もう1勝がブックオフである。ブックオフは12戦目だが、これ以前の事業展開には、様々な失敗があった。
社会人の第一歩は、家業の精麦工場だった。全農の下請けとして、畜産のための配合飼料工場で働いた。米国から輸入されるトウモロコシ、コーリャン、アワなどからなる飼料が入った30kgもの袋を担ぐ重労働の毎日だった。会社は「山梨くみあい飼料株式会社」となって続き、28歳当時は実質的な社長だった。しかし、経営が次第に安定してくると、農協関係の人がどんどん入ってくるようになり、経営の決定権を奪われ、会社組織はだんだん官僚化していった。そこで独立する決心をした。
最初に着手した事業は、オーディオ販売だった。山梨に500坪の土地を購入して、駐車場付きの大型オーディオショップ「ユアーズ」を1970年に開店した。ユアーズを開店してから3年間、事業を安定させるために手を尽くしたが倒産した。ユアーズへの来店客は多かったが、お客様はお店でいい音だけを聴いて機器を選んで、少しでも安い秋葉原で購入していた。倒産した頃、ダイエーが私の店で98000円のオーディオ商品を、仕入れ値より安い60000円ほどで売っていた。これを見た時、一巻の終わりだと思った。この失敗から「販売の仕方に革新的なものがなく、既存のお店と同じ技術で、同じようなものを売っていても駄目だ」という教訓を得た。
オーディオ販売で初戦敗退した後、たまたま出席した楽器屋さんの会合にヒントを得た。楽器屋さんのビジネスは、音楽教室の生徒の数によって成り立っている。そこで「音楽教室をやろう」と某メーカーに申し込んだが、山梨県は某楽器店が中心になっていて、卸値は9掛けだと言われた。それならばと中古ピアノの商売を始めた。すぐに全国の調律師に手紙を出して、ピアノを集めて、一斉セールをしたら当たった。
その後、1万坪の工場跡地を開発するというプロジェクトに参加した。その頃、偶然に横浜市港南台あたりを通った時、黒山の人だかりができているお店が目に止まった。コミック本がずらりと並んだ立ち読みできる古本屋だった。古本が「1000円」「500円」「100円」と分かりやすく並んでいて、定価の半額程度の古本が飛ぶように売れていた。
「よしっ、これだ!」中古ピアノで使った仕組みを古本に当てはめていけば、20〜30店舗くらいは簡単にいけると思った。1990年、35坪の中古書籍販売店を出した。これが「BOOK OFF」1号店である。
著者 坂本 孝
1940年生まれ。ブックオフコーポレーション 創業者 俺の株式会社 社長 オーディオ販売や中古ピアノ販売などいくつかの事業を経て、1990年「ブックオフ」を創業。16年間で1000店舗まで拡大し、書籍業界の流通に革命をもたらした。 2009年、VALUE CREATE株式会社を設立し、飲食業に参入。2011年、東京・新橋に「俺のイタリアン」をオープン。大繁盛店となり、その後、同様のコンセプトで「俺のフレンチ」や、和食バージョンを展開している。
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帯 京セラ名誉会長 稲盛 和夫 |
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DIME (ダイム) 2014年 12月号 [雑誌] 明治大学文学部教授 斎藤 孝 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.11 | 4分 | |
第1章 空前の繁盛店、「俺のイタリアン」誕生 | p.25 | 32分 | |
第2章 2勝10敗の事業家人生 | p.85 | 9分 | |
第3章 ブックオフがNo.1企業になれた理由 | p.101 | 11分 | |
第4章 稲盛和夫氏の教えと、私の学び | p.121 | 11分 | |
第5章「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」は進化する | p.141 | 11分 | |
第6章「物心両面の幸福を追求する」決意表明 | p.161 | 17分 | |
第7章 業界トップとなり、革新し続ける | p.193 | 9分 | |
おわりに | p.210 | 3分 |
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