ノマドに向いた職種は少数派
日本でノマドワーカーについて語っている有名人には、「メディア業界」で仕事をしている人、もしくは「コンサルティング業界」の人が多い。ところが、こうした業界は日本の産業全体の規模で考えると少数派である。例えば、ライターやデザイナー、コンサルタント、広告専門家等の「ノマドワーカーが多くいそうな職種」が仕事をするメディアや広告の業界は規模が小さいので、仕事の数が多くない。
ノマドになるとは、激烈な格差社会で競争すること
現在イギリスではノマドの数が400万人を超え、過去最大の数になっている。インターネットでどこでも仕事ができるようになった事から、雇用される年数等ではなく、スキルや成果ベースの働き方に移っている。IT業界にはノマドが大勢おり、その多くは高給取りでベテランの技術者である。彼らは誰にでもできる「付加価値の低い」労働を提供する人々ではなく「専門家」である。
その一方で、技術がないノマドワーカーの賃金は安い。受付や営業補助、ルート営業など、専門性が低い職種などは月収20万円に届かない。ノマドワーカーになるという事は、スキルや専門性の高い人はどんどん稼げるようになり、そうでない人は低賃金で働かざるを得ない、という「激烈な格差社会」を意味する。
ノマドは初日から「その道のプロ」として働く事が要求されるため、就業年数の少ない若者や「付加価値の高い」スキルを持たない人々は、労働市場から疎外されていく。経験の浅い若者は雇われにくくなるという事は、英米で実際に起こっている。経験を「買う」ために、若者は学生の内からインターンをやる。インターンの経験が仕事の有無を左右するのである。
インターンの機会がない学生達は、正社員になる機会も、スキルを身に付けてフリーランスを選ぶ選択肢もない。イギリスでは、若年層の高学歴失業者があふれ、社会階級の固定化という社会問題になっている。
ノマド的な社畜であれ
ノマドに必要なのは、専門知識やスキルだけではない。営業、事務処理、対人能力も必要とされ、普通の会社員よりはるかに高い能力が必要である。ノマドの厳しさに比べれば、会社員なぞ甘ったるいもの。サラリーマンは、会社にいればいた時間だけお金をもらえる。
一方、日本で社畜になる事の最大の問題点は、言われた事だけをやり、会社の一部として歯車的な事しかやらないので、自分で考える力や発想力が身に付かないという事。例えば、市場の環境が急に変化して、会社が倒産してしまった場合、別の事ができなくなる。
お勧めしたいのは、社畜として会社から給料をもらいながら、ノマド的な雇い人になる事である。社畜であっても、日々の仕事を工夫する事で、自分らしい個性を出す事は可能。自分らしい付加価値を仕事の中で見つけ、それを毎日続ける事である。