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2013/04/20更新

あの人の声は、なぜ伝わるのか

128分

2P

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日本古来の声の出し方、呼吸法でコミュニケーションが変わる!?

尺八奏者である著者が、伝わるコミュニケーションをつくるための、声の出し方、呼吸法を紹介。芸能人の声を事例に、伝わる声とはどのようなものかを分析しています。


■日本人が失った「伝わる声」
私達が耳にするほとんどの音は「基音」と「倍音」の組み合わせでてきている。基音は音の高さを決め、倍音は主として音色を決めると言われている。例えば、同じ「あ」の発音でも、うれしそうな「あ」もあれば、苦しそうな「あ」、悲しそうな「あ」もある。この違いは、それぞれの「あ」に含まれる倍音の違いによる。

日本人は倍音を発する、受け取る身体と、倍音から様々なメッセージを読み取る鋭敏な感性をあわせ持っている。その要因は、日本語にある。日本語は「母音中心」であるという言語的な特徴から倍音の宝庫なのである。日本人は、日本語を使ううちに倍音をコントロールする術を身に付けてきた。そして、日本人は特に非言語的な、音響によるコミュニケーションに重きを置いてきた。同じ言葉でも、それをどう響かせるかで、相手が受け取る印象に無数のバリエーションをつくる事を行ってきたのである。

ところが、現代の日本人の声は変わってしまった。その背景には、日本社会の欧米化に伴い「よい声」の定義が変わってきている事がある。口を大きく開ける西洋式の発声では、倍音の成分が少なくなってしまい、日本語の発音には適さない声になる。

超短要約

■日本古来の呼吸法「密息」
日本人が倍音に自然と親しむようになった要因には、日本語の特徴以外に「密息」という呼吸法がある。密息の特徴は3つある。それは「骨盤を後ろに倒して」「お腹を膨らませたまま」「横隔膜だけを上下させて」息をする呼吸法である。

仕事から疲れて家に帰ってきて、椅子に座り「ふうううっ」と大きく息を吐く、あの時の呼吸に近い。骨盤は後ろに倒れている。密息はとても深い呼吸ができる。一度に吸える・吐ける息の量が、胸式や腹式よりもはるかに大きくなる。脳が活性化し、集中やリラックスも簡単にできるようになる。密息は身体の感度を高める呼吸でもあり、倍音のように繊細な情報をやりとりできる身体をつくる。

日本人が密息を身に付けていた大きな要因は、帯の使用。明治以降は密息が失われていった説明にもなる。着物を着て帯をすると、着崩れないように帯とお腹で着物をはさむようになる。そのために日常的に密息によって、お腹を張りつめ続ける必要があった。

密息は、五感を鋭くし、倍音というデリケートな情報をキャッチするために欠かせないものである。密息を身に付けるには、以下のトレーニングを行う。

①椅子に座り、骨盤を倒す練習をする
②下腹に手をあてる
③下腹を膨らませながら息を吐く
④下腹を膨らませたままで、少しだけ息を吸う
⑤また下腹を出すつもりで息を吐く
⑥④と⑤を繰り返す

呼吸は新たなコミュニケーションを開く鍵となる。

著者 中村明一

作曲家、尺八演奏家 横山勝也師、多数の虚無僧尺八家に師事。米国バークリー音楽大学およびニューイングランド音楽院大学院にて作曲とジャズ理論を学ぶ。虚無僧に伝わる尺八古典曲の採集・分析・演奏をライフワークとしつつ、ロック、ジャズ、現代音楽、即興演奏、コラボレイション等に幅広く活躍。世界40カ国余で公演。 文化庁芸術祭賞など受賞歴多数。洗足学園音楽大学大学院、桐朋学園芸術短期大学講師。日本現代音楽協会会員。

この本を推薦しているメディア・人物

帯
明治大学文学部教授 齋藤 孝

章の構成 / 読書指針

章名 開始 目安 重要度
はじめに p.2 3分
第1章 日本人が失った「伝わる声」 p.15 13分
第2章 伝わる人は二つの「倍音」を操っている p.41 18分
第3章 倍音コミュニケーション術 p.77 22分
第4章 「密息」による身体の使い方 p.119 19分
第5章 密息で「伝わる身体」を取り戻す p.157 20分
おわりに p.196 1分

この本に影響を与えている書籍(参考文献、引用等から)

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