日本経済が停滞した理由
日本経済停滞の主因は、1970年代に出現した様々な課題に日本が対応しきれなかった結果である。
①追い付き型成長の限界
先進国との経済格差を相当程度縮めた事から、先進国の新技術を模倣したり取り入れたりするだけで成長する事ができなくなった。
②固定為替相場制の崩壊とグローバル化
ブレトン・ウッズ体制が終わり、割安な円に依存して輸出拡大を図る事ができなくなった。グローバル化対応のため、日本は生産システムや他の経済制度の再編成を強いられた。
③急速な高齢化
急速な高齢化により、日本は生産要素(資本、労働人口)の蓄積のみに頼って成長する事ができなくなった。つまり、成長を続けるには、先進国の技術の模倣ではなく、独自の技術革新による生産性向上と内需の拡大が必要となった。
経済成長を阻害する3つの要因
こうした課題に直面した日本は、政策の失敗により1990年代後半以降、さらに状況を悪化させた。
①ゾンビ企業への貸出しと不徹底なリストラ
ゾンビ企業とは、生産性や収益性が低く本来市場から退出すべきであるにもかかわらず、銀行等の債権者や政府からの支援により事業を継続している企業である。ゾンビ企業は、本来であればより生産性の高い企業に再配置されるべき労働者を雇用し続ける事で、経済の効率性を低下させる。ゾンビ企業の蔓延は、新企業の参入を妨げたりする。
②政府の規制
産業の保護は競争を制限するので、ゾンビ企業と同じような問題を引き起こす。特に非製造業は製造業よりも規制緩和が緩慢で、2000年代に失速した。
③マクロ経済政策の失敗
日本はマクロ経済政策においても3つの大きな誤りを犯した。
1.銀行の不良債権問題への対応の遅れ(ゾンビ企業への貸出しを継続させた)
2.財政政策の失敗(生産性の低い公共事業への投資、民間投資の圧迫)
3.金融政策の失敗(金融緩和が不十分であった)
日本再生のための処方箋
日本が経済成長を望むのであれば、政策の方向転換が必要である。
①規制改革
・事業活動にかかわるコスト削減(事業開始手続き、土地移転手続きの簡素化、税収減の法人税から消費税へのシフト、納税者番号の導入、農業用地の移転)
・ゾンビ企業保護の撤廃(中小企業への貸出条件緩和の見直し)
・非製造業部門の規制緩和(混合診療の自由化、幼保一元化など)
・規制撤廃に焦点を合わせた構造改革特区
②日本経済の対外開放
・TPPへの参加
・農業保護の削減(土地持ち非農家、自給的農家を減らし、生産性を向上させる)
・移民流入
③マクロ経済政策の改善
・高齢者を対象とした支出の削減、消費税率の段階的引き上げ
・ETFやJリート等を対象とした日銀の資産買い入れ措置の拡大