日本の金融問題の第一人者である著者が、日本経済の低迷を長期的な視野から分析し、その解決策を説いています。なぜ、日本の経済成長が止まったのか?どうすれば、日本は再び経済成長を取り戻せるのか?
日本が取るべき具体策がわかりやすく書かれています。
■構造的な改革が必要である
1990年代初頭にバブルが崩壊してから日本経済は減速し、未だに低成長から抜け出す事ができずにいる。この長期停滞を振り返る時、3つの事実が明らかになる。
①日本経済の低成長が長期間続いている
②政府、日銀は傍観していた訳ではなく、数々の景気刺激策がとられた
③これらの方策の多くは、日本経済を停滞状態から脱出させる事ができなかった
3つの事実が意味するのは、日本経済の停滞は単なる景気の悪化ではなく、求められるのは通常の景気刺激策ではないという事である。日本経済停滞の原因は根が深く、もっと構造的な改革を推し進めていく必要がある。
日本の停滞は1970年代に始まった3つの主要な変化への適応に失敗した結果だった。
①日本は先進国との経済格差を相当程度縮めた事から、追い付き型の成長はもはや不可能となった。
②ブレトン・ウッズ体制が終わり、日本は安定的かつ過小評価された為替レートによる輸出の促進ができなくなった。
③急速な高齢化により、日本は生産要素の蓄積のみに頼って成長する事ができなくなった。成長を続けるには、こうした変化に適応する必要があり、独自の技術革新による生産性向上と内需の拡大が必要であった。
こうした課題に直面した日本は、3つの重大な過ちを犯した。
①構造変化の痛みを和らげるために、通常の競争的な市場であれば退出させられていたはずの「ゾンビ企業」を保護した。ゾンビ企業は、生産性の高い企業の新規参入や健全な競争相手の収益性を低下させた。
②政府による様々な分野での規制が生産性上昇の妨げとなった。
③1990〜2000年代のマクロ経済政策に大きな問題があった。金融緩和は不十分でデフレを終結させる事ができなかった。財政政策も一貫性を欠き、繰り返し策定された景気刺激策の中心だった公共事業は往々にして有害でさえあった。公共投資は生産的ではなく、さらに民間投資を圧迫した。銀行危機への対応は不十分で、銀行にゾンビ企業の支援継続を促す政策もとられた。
こうした政策は小泉政権のもとで修正されるかに見えたが、小泉改革でも、生産性向上策は集中的に取り上げられる事はなかった。小泉政権後は、改革に逆行する政策がとられ、経済成長の先行きは未だに暗いままである。
著者 星 岳雄
スタンフォード大学教授 米カリフォルニア大学サンディエゴ校助教授、准教授、教授などを歴任。専門分野、金融論、マクロ経済学、日本経済論 。ユニオンバンク社外取締役。
著者 アニル・カシャップシカゴ大学ブース経営大学院教授 イタリア銀行アイヌアディ経済金融研究所取締役。専門分野、銀行論、景気循環論、金融規制、金融政策。
週刊 ダイヤモンド 2013年 3/2号 [雑誌] 早稲田大学政治経済学部教授 原田 泰 |
日本経済新聞 |
エコノミスト 2013年 3/19号 [雑誌] 慶應義塾大学経済学部教授 土居 丈朗 |
週刊 東洋経済 2013年 8/17号 [雑誌] |
エコノミスト 2013年 2/19号 [雑誌] |
週刊 東洋経済 2013年 4/6号 [雑誌] BNPパリバ証券経済調査本部長 河野 龍太郎 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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第1部 何が日本の経済成長を止めたのか | p.3 | 45分 | |
第2部 経済改革の成功と挫折―小泉改革の検証 | p.69 | 44分 | |
第3部 日本再生のための処方箋 | p.133 | 38分 |