企業が、トヨタ生産方式を導入するにあたって、トップと管理者はどのようにすべきか。トヨタ生産方式を作り上げた大野耐一氏から、直接教えを受けた著者が、トヨタ式の製造マネジメントのポイントを紹介しています。
■トヨタの管理者の務め
トヨタの製造部門の管理者は、何と言ってもモノの流れが速く、異常時のための在庫を持っていない「トヨタ生産方式」のモノづくりで部や課を運営しているため、不具合が生じると自部署のラインのみならず、瞬く間に関連部品ライン、ユニット・アッセンブリー、果ては組立工場までラインストップしてしまう環境下で、いち早く事を収める必要がある。
日常的にも、自ら現場に出て情報収集する管理者や、自分で完成品在庫や仕掛けかんばんの遅れを状態を確認したり、作業者が標準を守って仕事をしているかを確認したり、不具合の未然防止に時間を割く事も管理者の務めと考える管理者が大部分であった。
■大野耐一さんの教え
①説明しても理解できる人はいなかったので、現地で細かく指導するしかなかった
新しい事を成功させる秘訣は、「トップ自ら率先垂範のリーダーシップ」「絶対に妥協を許さず、諦めない強い熱意と意志」「長期間にわたるフォロー」である。
②改善とは最終工程に近づくこと
サプライチェーン(外注など)の数を減らして、最終工程までの工数を減らすことが、生産のリードタイムを短縮する最も大切な事である。
③ロット形成はモノづくりの進歩を妨げる
モノをためてつくることを黙認すると、人はやりやすい事しか考えないようになる。
④改善してラインから一人減らす事ができた時は、一番優秀な作業者を外に出すこと
改善した時に省人化すれば一人工の効果で終わるが、ラインの外に出して改善作業をする事で効果が増える。
⑤起動スイッチを押す時、歩きながら押せないか
理想の姿を常に頭の中で描きながら現場を見続ける。
⑥製造の技術員は横糸になれ
全工程をスルーで見て、工程の全体最適化を図ること。縦糸(設計、調達・生産技術)を見ながら、製造は横糸(品質、安全、原価、納期)を推進すること。
著者 原田 武彦
1944年生まれ。元トヨタ自動車理事 1968年トヨタ自動車工業に入社。本社機械部に配属、トヨタ生産方式を実践で学ぶ。機械部長、生産調査部主査、本社工務部長を経て2000年台湾・國瑞汽車董事・総経理に就任。2001年トヨタ自動車理事。2005年中央発條㈱社長に就任し、2010年退任。現在、中部産業連盟会友。
帯 トヨタ自動車会長 張 富士夫 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.1 | 3分 | |
第一章 大野耐一さんの教えに学ぶ | p.11 | 49分 | |
第二章 トップの役割―トヨタ生産方式を成功裡に定着させるためのマネジメント | p.97 | 13分 | |
第三章 管理者の役割―部下の仕事がうまくできるようにする人 | p.119 | 29分 | |
第四章 海外駐在トップの役割 | p.169 | 23分 | |
あとがきに代えて | p.209 | 3分 |