アップル、IBM、ウォルマートもすべて模倣から始まった。他社の要素を模倣する事により、優れた製品やビジネスモデルを構築する事の優位性を示し、その重要性を説いています。
■模倣者の優位性
「模倣」というとマイナスのイメージがつきまとうが、数多くの模倣者が大きな成功を収めて、イノベーターを追いやっているのが現実だ。通信や交通の手段が発達すると共に、模倣の機会は一気に増えた。さらに、グローバル化とテクノロジーの進歩により、模倣者の層は広がり、コストが下がり、模倣のペースが大幅に加速している。模倣された製品が広まるまでにかかる期間は、1877〜1930年は平均で23.1年だったのに対し、1930〜39年は9.6年に縮まり、1940年以降は4.9年になった。模倣のペースが早まる傾向は、ほとんどすべての製品に見られる。
そして、多くの模倣者が成功している。その理由の一つには、イノベーターやパイオニアがすでに投資して事業や市場を開拓しているため、模倣者はそれにただ乗りできる事が挙げられる。研究開発費、マーケティング費用を抑えられる。さらに大きな賭けに失敗する事態も避けられる。
1948〜2001年に生み出されたイノベーションを対象にした調査から、イノベーター達は自分が起こしたイノベーションの現在価値の2.2%しか獲得していない事が明らかになっている。
■イモベーションを成功させるための10カ条
ビジネスにとって模倣はイノベーションと同じくらい重要である。また、模倣はイノベーションそのものを生み出すのに不可欠な要素でもある。焦点を絞り、効果的にイノベーションを生み出すには、模倣に対して体系的かつ戦略的なアプローチをとる事が大切である。
①車輪の再発明はするな
新しく車輪を発明するのではなく、すでにある車輪よりも質が良いか安いバージョンを発明する、または他の技術と結合させて、有用なモデルを作り出すこと。
②模倣を熱狂に変えろ
模倣につきまとう負のイメージを取り払って、模倣を受け入れられやすくするだけでなく、イノベーションと同じくらいエキサイティングなものにする。模倣を正当に評価して、報酬を与える事は大きな一歩となるが、真の熱狂を呼び起こすには、企業文化の変革を推進する必要がある。
③類人猿に倣え
生存に不利な形質を持つ類人猿が厳しい環境を生き残り、繁栄できているのは、模倣能力があるからである。企業は模倣戦略を効果的かつ創造的に展開して、競争相手を追い越すべきだ。
④すぐに頭に思い浮かぶものを集めるな
ベンチマーキングやベストプラクティスが全盛の時代には、局所探索になりがちである。自分のテリトリーの外に目を向け、地理的にも視野を広げ、小さくて目立たない企業だけでなく、失敗した企業も探すこと。
⑤物事の脈絡を読み取れ
ある環境の中でうまくいっているものが、別の環境でもうまくいくとは限らない。脈絡を理解せずに模倣するのは、地図や計器も見ないで飛行機を操縦するようなものである。
⑥ピースを正しく合わせろ
落とし穴を避けて通るには、徹底的な分析をして、システムの関係性の根底にある組立て構造の全体像を見失う事なく、オリジナルとコピーの両方の個々の要素が持つ役割を一つひとつ明らかにしなければならない。
⑦タイミングがすべてではないと心得よ
タイミングは模倣の重要なポイントだが、答えを出すべき問題は他にもある。どこの、誰の、何を、どのように模倣するかも重要である。
⑧より価値の高い新製品を作れ
模倣者はオリジナルよりも安いか質の良い新製品を送り出すだけでなく、リスクを調整したコスト効率の高いやり方ができるかも重要となる。
⑨攻撃して防御せよ
模倣というゲームで成功するには、模倣の成果を真似されないように、模倣を効果的に阻止する事が求められる。模倣に対する防御を克服する方法を学び、防御の効果も高める。
⑩イノベートして、イミテートして、イモベートせよ
成果を出している多くの企業は、他社から借り入れた要素を独自性のある低コストのパッケージにまとめ、それを継続的に改善している。こうした変化は避けて通る事はできない。
著者 オーデッド シェンカー
オハイオ州立大学フィッシャー・カレッジ教授 フォード・モーター社グローバル・ビジネス・マネジメント担当理事を兼務。ケンブリッジ大学、北京大学、IDC(イスラエル)、国際大学(日本)など、世界の数多くの大学でも教鞭をとる。 専門は国際経営・異文化マネジメント。元国際ビジネス学会副会長兼フェロー。
日経ビジネス |
日本経済新聞 |
日経ビジネス Associe (アソシエ) 2013年 03月号 [雑誌] |
週刊 ダイヤモンド 2013年 3/9号 [雑誌] |
PRESIDENT (プレジデント) 2013年 4/15号 [雑誌] 東京工芸大学教授 大島 武 |
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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第1章 繁栄するコピーキャットたち | p.2 | 17分 | |
第2章 模倣の科学と技法 | p.24 | 14分 | |
第3章 模倣の時代 | p.42 | 17分 | |
第4章 偉大なる模倣者たち | p.64 | 35分 | |
第5章 模倣の能力とプロセス | p.110 | 21分 | |
第6章 模倣という戦略 | p.138 | 23分 | |
第7章 イモベーション 成功の条件 | p.168 | 20分 | |
特別寄稿 日本企業のイモベーション | p.194 | 20分 | |
あとがき | p.220 | 2分 |
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コピーの有用性を、解説。全く新しいものを発明するということは殆ど非現実的であり、付加価値をつけた模倣にこそ、新たな可能性やニーズの発掘に繋がる可能性が高い。
2013-05-19
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