現役コロンビア大学院生であるマジシャンが、マジック中毒となり、様々な師匠からマジックの技を習得していく過程で、その原理を学ぶノンフィクション物語。
マジックで使われている人間の脳の認知の仕組みから、メンタリズムのテクニック、詐欺師の基本構造、腕時計の盗み方まで、著者自身が学んできた事が紹介されています。
■あらゆる詐欺の基本
記録上最も古い手品の一つ「スリーカードモンテ(卓上に伏せた3枚のカードを早業で入れ替え、特定の1枚を当てさせるいかさま賭博)」のような詐欺が、これほどまで人をひきつけてやまない理由は、その技法ではなく、明らかにその心理作戦にある。いかさま師は相手の心の隙をつき、プライドをくすぐり、欲望を植え付け、判断力を鈍らせ、絶大な信頼を得ると同時に期待をあおりたてる。
こうした才能は、ウォールストリートでもテレビショッピングでも、ワシントンでも遊説行脚でも見られるものだ。信頼を得るための仕組みにはおしなべて共通の特徴がある。
詐欺師は、人生の問題を手っ取り早く解決したいと思う気持ちにつけ込む。人々の欲望につけ込み、時には誰もが持つ不誠実な心の種を利用する。だから貪欲になると、そうした詐欺師に操作されてしまう。
■ペテンの真髄
詐欺師はカモの思考をどうやってコントロールするのか?
すこぶる強力なトリックを編み出して、誰かをとことんしびれさせたいなら、あらゆる段階で相手が何を考えているかを逐一わかっておく必要がある。そして相手を描いた筋書き通りに進ませ、確実に崖から落っことさなければならない。これぞ優れた詐欺師のなせる技である。
相手の注意を引きつけておきたければ、「自分は何か秘密を知っている」と相手に思わせておくのである。遠回しにヒントを与えておけば、相手も乗り遅れていないと思って安心する。そして自分にわかっている事を、今度は相手に証明して欲しくなる。そうやってゲームにはまっていく。
スリーカードモンテで最も誤解されているのは、この詐欺は、カモがいかさまに気づかないから成功するという考えだ。だが、むしろモンテは、カモがいかさまに気づくかどうか、そして自分も仲間に加わりたいと思うかが成功の鍵を握る。いかさま師はカモの知性を褒めそやし、このゲームは仕組まれたものに違いないとカモが確信するように持って行く。自分は何でもお見通しだと自負したカモは、今度は自分がハスラーを出し抜こうと考える。そうしてカモは追い込まれていく。
著者 アレックス・ストーン
マジシャン、コロンビア大学博士課程学生 5歳でマジックを学び始める。特技はスライハンドマジック、クロースアップマジック。ハーバード大学の英文学部を卒業後、『ディスカバー・マガジン』でサイエンスライターおよび共同編集者として、物理学・数学・テクノジー分野を担当、パズルについてのコラムを編集していた。そのかたわら、夜はコロンビア大学の実験的な天文学研究室に通い、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)を測定するための電磁フィルターの設計に参加した。
帯 数学者 ピーター・フランクル |
日本経済新聞 サイエンスライター 竹内 薫 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
第一章 マジック・オリンピック | p.7 | 18分 | |
第二章 ミステリー・スクール | p.29 | 19分 | |
第三章 三四丁目の奇跡 | p.52 | 26分 | |
第四章 盲目の達人 | p.83 | 27分 | |
第五章 いかさま賭博 | p.115 | 29分 | |
第六章 掟破り | p.150 | 26分 | |
第七章 マジックなんて、やめて! | p.181 | 18分 | |
第八章 腕時計の盗み方 | p.202 | 28分 | |
第九章 メンタリスト | p.235 | 24分 | |
第十章 道化になっておどける | p.263 | 12分 | |
第十一章 完璧なシャッフル | p.277 | 34分 | |
第十二章 フライトタイム | p.318 | 9分 |
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