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2012/12/31更新

企業家たちの幕末維新 (メディアファクトリー新書)

142分

3P

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幕末・維新の動乱期に活躍した企業家たちの物語

幕末・維新の動乱期に活躍した企業家たちが、どのようにして財を築いていったのか。当時の企業家の原点がわかる1冊。


■新興企業家たちの時代
幕末から明治の半世紀は、資産家の栄枯盛衰が激しい時代だった。1849年には231家いた長者のうち、50年間にわたってその地位を維持した家は20家。三井・鴻池・住友など金融関係商人と呉服・酒など上方からの下り物を扱った都市商人たちであった。

幕末・明治期には企業家・資産家の目まぐるしい交代劇が演じられた。この企業家たちには5つのタイプがあった。

①旧商家
江戸時代、またはそれ以前に起業して資産をなし、維新期は経営改革に成功して生き残った。ex.三井家、住友家

②ベンチャー企業家
幕末・維新の動乱をビジネスチャンスに変え、ほぼ徒手空拳から財を蓄えた者。ex.岩崎弥太郎、安田善次郎、藤田伝三郎

③技術者・職人出身
海外留学や現場での実学で西洋技術を身に付け、主に工業部門で頭角を現して経営に加わる。ex.山辺丈夫、菊池恭三、豊田佐吉

④社会的企業家
キリスト教などの信仰をバックボーンに、社会問題の解決を目指してビジネスに取り組んだ。ex.波多野鶴吉、大原孫三郎

⑤財界リーダー
近代ビジネスに明るく、投資家と技術者・企画者を結び付けて多くの企業の先導者となった。ex.渋沢栄一、五代友厚

超短要約

■なぜ都市商家は環境の変化に対応できなかったのか
江戸期の大商家では所有と経営の分離、いわゆる番頭経営が一般的であった。当主の役割は、先祖からの家督や家財を次の人に渡すまでの当番に過ぎないとされていた。当主個人の財産処分権や経営裁量権には厳しい枠がはめられ、実質的な経営は支配人・番頭など、雇われ経営者が担った。

しかし、支配人・番頭に任されたのはおおむね日常的管理業務であり、戦略的意思決定までは含まれていなかった。また、多くの商家では「家訓」「店掟」などが制定されていた。家訓において最も重視された項目は家業の永続的維持であり、必然的に多くの場合「新儀停止(新しい事をしてはならない)」「祖法墨守(祖先の決めたルールを厳格に守る」が基本理念となっていた。

また、大商家における奉公人の教育は、働きながら現場で教える方法。過去の経験やノウハウから学ぶやり方であったので、経営環境に大きな変化が生じた時には役に立たなかった。

■老舗を生き残らせた者たち
幕末維新期に多くの豪商が没落する中で、三井家と住友家は近代企業へと再生できた代表的事例である。三井家は17世紀後半に越後屋呉服店を開業。次いで幕府公金を扱う両替業にも進出し、江戸屈指の豪商となった。しかし幕末になると事業は不振に陥った。三井は、小両替商だった三野村利左衛門を支配人に抜擢する。三野村は、次の功績を残した。

①事業を政府御用を担当する銀行業中心に再構築。無利子の官公金を運用。後に三井銀行を創立。
②営業不振の呉服店を三越として分離独立。さらに三井物産を発足。
③家政改革を断行。同族9家の権限を制限し、従業員との共同出資会社に再編。

有能な奉公人によって窮地を免れたのは住友家も同様であった。住友家は16世紀末に銅吹屋と銅貿易商を営んだ。17世紀後半になり銅山経営に乗り出し発展したが、江戸末期には採掘高が減少し、危機に瀕していた。この難局に対し、立ち上がったのが奉公人の広瀬宰平。広瀬は次の改革を行った。

①洋式技術の導入による銅山を再生。
②多様な人材を採用。さらに支配人の権限を強化するよう家法を改正

思い切った人材の登用と慣行軌道から逸脱する改革がなければ、創業200年に及ぶ豪商といえどもこの時代を生き残れなかったのである。

著者 宮本又郎

1943年生まれ。大阪大学名誉教授 関西学院大学大学院経営戦略研究科教授 神戸大学大学院経済学研究科修士課程修了後、同大経済学部助手、大阪大学経済学部助教授を経て1988年、大阪大学経済学部教授に就任。 関西学院大学客員教授、大阪経済大学客員教授、放送大学客員教授。 専攻は日本経済史、とりわけ経営者の歴史を研究する企業者史学に造詣が深い。 企業家研究フォーラム会長、大阪企業家ミュージアム館長。

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章の構成 / 読書指針

章名 開始 目安 重要度
はじめに p.9 2分
第1章 激動の日々のなかで p.13 6分
第2章 江戸の遺産と明治の挑戦 p.25 9分
第3章 老舗を生き残らせた者たち p.41 16分
第4章 明治のベンチャー企業家列伝 p.71 38分
第5章 技術者出身の企業家たち p.141 11分
第6章 社会的企業家たちのミッション p.161 6分
第7章 近代をつくった財界リーダー p.173 18分
おわりに p.206 3分

この本に影響を与えている書籍(参考文献、引用等から)

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