行動経済学の理論をもとに「値段」のつけ方を解説した本。顧客心理を読み、顧客を満足させる価格設定の方法を解説しています。
どのように顧客を高額商品へと誘導するのか、安売り競争に巻き込まれないためにはどうすればいいのか、値上げはどのようにすればよいのか、といったマーケティングに関する基礎知識が得られます。
■何と比較させるかで価格は変わる
商品に対する顧客の価値は主観的で、状況に大きく左右される。新しい商品やサービスに初めて出会った時、それが自分にとってどれぐらい価値があるのか、ぼんやりしかイメージできない。一般的に価格の基準にしやすいのは、新商品と最も類似しているものであり、通常は複数の候補が存在する。そのため、売り手側は、できるだけ高価な商品と類似しているように仕向けて、想定価格を操作できる。
どんな価値も最終的には「苦しさの回避」「楽しさ」「時間」「金銭」という4種類の根源的な動機に到達できる。顧客がそれぞれのニーズを満たすための選択肢は複数ある。
競合相手が変われば価格領域も違う。したがって、競合相手の選択と、それにあわせたポジショニング次第では、全く違う価格設定ができる。
■マーケットでの競争戦略
競争には二面性があり、マイナス面ばかりではない。例えば珍しい商品を販売している場合、競合相手がいれば商品に対する信用は格段に高まる。また相手のマーケティングに便乗し、商品の選択肢が複数ある状況が知られれば、顧客は他にも商品の購入者がいる事に安心する。
一方、商品を価格だけで比較されるようになるリスクもある。そうならないためには、他社商品との差別化を図り、単純比較できないようにする。具体的には独自の商品特性を付加すればよい。
競合相手が高価格商品でニッチ市場を狙ってきたとしても、すぐに対抗措置が必要とは限らない。相手のシェアはわずかなので、的確な対応策に時間と予算をかけた方がよい。一方、低価格商品への対応に対しては、同じように価格を下げるのは得策ではない。防御策は次の3つが挙げられる。
①販売促進の提案
②返金保証サービス
③ミニサイズや限定商品の発売
理想的な戦略は、競合商品よりやや上質で高価格、またはやや低価格の2種類への「絞り込み」である。
■価格の高い商品に顧客を誘導する
中心価格帯の商品より高額な商品を発売するのは常套手段だが、最高額を引き上げすぎると全体的な価格イメージに影響しかねない。差別化やアンカリングの価格は高すぎてはいけない。
価格が高くなければ、顧客は商品や店舗を購入の選択肢として検討する。そうなると実際の購入額ができるだけ多くなるように仕向けるべきだが、高額になりすぎて購入意欲をなくす事態は避けなければならない。
顧客を高額商品に誘導するアップセリングには2種類の方法がある。
①商品に対する特定のニーズが強い顧客の購入額を増やす方法
②商品の魅力を高めるために補足的役割のものを提供する方法
アップセリングは一挙両得の手段である。売り手側は、それとなく価格の差別化を進められ、買い手側も商品特性をうまく選択して、望み通りの商品に変えられる。
2つのアイテムを同時に購入する場合と個別に購入する場合とでは、意思決定のプロセスに大きな違いがある。例えばパッケージで注文する時は、両方の価格を合計し、無意識に通常の購入額と比較するものである。個人差はあるが、50〜100円以下の買い物であれば、それほど深刻に考えずに簡単に決断できる人が多い。そのため合計金額380円で販売するより、280円と100円に分けた方がよく売れる。
また、主体となるサービスの購入が決定すれば、その費用は「サンクコスト(埋没費用)」になるので、追加サービスは、主体となるサービスに比べてわずかな金額でサービスを充実させられるものと認識される。
著者 リー・コールドウェル
価格リサーチの専門家 認知・行動経済学者、数学者 1994年、価格リサーチのコンサルタント会社Inonを設立。行動経済学と心理学をベースに最適な価格を解析する。価格コンサルティングに従事するかたわら、ビジネス解説者としてBBC Newsを含む多数のメディアに頻繁に出演する。
マインドマップ的読書感想文 smooth |
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
週刊 ダイヤモンド 2013年 3/9号 [雑誌] 紀伊國屋書店和書仕入本部係長 水上 紗央里 |
日経トップリーダー |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.3 | 3分 | |
第1章 ポジショニングと価格設定 | p.15 | 11分 | |
第2章 原価に基づく試算 | p.33 | 8分 | |
第3章 顧客心理の読み方 | p.45 | 10分 | |
第4章 マーケットのセグメンテーション | p.61 | 9分 | |
第5章 バイアスとの戦いと公平さの追求 | p.75 | 8分 | |
第6章 記憶と期待 | p.87 | 9分 | |
第7章 アンカリング効果 | p.101 | 8分 | |
第8章 マーケットでの競争戦略 | p.113 | 11分 | |
第9章 おとり戦略 | p.131 | 10分 | |
第10章 代金の後払い | p.147 | 9分 | |
第11章 ティーパーティー効果 | p.161 | 8分 | |
第12章 バンドリングの技法 | p.173 | 10分 | |
第13章 無料(フリー)の効用 | p.189 | 8分 | |
第14章 アップセリング | p.201 | 10分 | |
第15章 提携販売とバリュープライシング | p.217 | 11分 | |
第16章 他人のお金 | p.235 | 8分 | |
第17章 価格設定の環境整備 | p.247 | 8分 | |
第18章 「あげる」心理学 | p.259 | 9分 | |
第19章 価格設定と倫理 | p.273 | 4分 | |
おわりに | p.279 | 3分 | |
補足資料A | p.285 | 10分 | |
補足資料B | p.300 | 3分 |
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良い本です
2013-09-16
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