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2013/03/01更新

JAL再生―高収益企業への転換

218分

8P

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管理者ではなく、リーダーであれ

破綻後、会長に就任した稲盛氏が最初に手をつけたのは、社員の意識改革である。具体的には「リーダー教育」という名の研修だった。最初は、社長以下、役員などの経営幹部を対象に行われたリーダー教育は、その後、課長クラスまで対象を拡大して実施され、JALのV字回復の大きな原動力の一つとなる。

破綻前のJALは、典型的な機能分担型組織だった。運航や整備、客室、空港、営業など一つ一つの部門が個別最適に終始しており、全体最適の視点が欠けていた。また、現場レベルでも会社全体としての一体感に欠けていた。

破綻前のJALでは、階層別に「マネジメント研修」が行われていた。しかし、管理するだけの人間は、会社の価値創造に貢献しない。会社全体に共通の価値観は醸成できない。必要なのは、リーダーである。自ら動いて周囲を巻き込み、結果として企業価値を着実に高められる人材である。

JALで実施されたリーダー教育は、抽象論的な「啓発型教育」ではない。経営の現場における実践や実行に落とし込むための経営哲学を共有する事が目的であり、稲盛氏の経営哲学である「経営12カ条」「会計7原則」「6つの精進」および外部講師による講義で構成された。17回のプログラム中、5回にわたり稲盛氏自ら講演した。最初はリーダー教育に懐疑的であった経営幹部の間にも徐々にフィロソフィは浸透していった。

その後、全社員を対象にJALフィロソフィ教育が開始され、参加者一人一人が生きた現場を感じる事ができるようになった。リーダー教育は、圧倒的な社内の雰囲気の変化をもたらした。組織間および上下間の壁を壊し、コミュニケーション闊達な会社へと様変わりした。

部門別採算による意識改革

採算意識の欠如は、JALが破綻に至った要因の一つである。かつてのJALで現場の収支に対する意識が薄かった理由は次の通り。

①計画策定者と計画執行者が別の主体だった
②売上や利益、コストといった経営数値自体が現場で共有されていなかった
③経営数値の実績値が明らかになるまでに時間がかかり、大雑把だった

稲盛氏は「採算責任の明確化」を目的とし、大幅な組織改正を行った。新体制では「路線」を収益の源泉として定義し、「路線別収支」を収益責任の中核に据えた。さらに収支管理を正確に行うため、「部門別採算制度」という管理会計の考え方を導入した。この制度は、現場の経営への参画意識を格段に高め、社員の自発的な行動を引き出す事となった。

JALフィロソフィと部門別採算制度という一連の仕組みが構築された事で、現場は初めて経営に参画できる機会が与えられたのである。