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2013/03/01更新

JAL再生―高収益企業への転換

218分

8P

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企業の改革を成功に導く鍵とは何なのか

経営破綻から、わずか2年で業績をV字回復させたJAL。その成功の鍵は何だったのか?
JAL再生を成し遂げた稲盛和夫氏の経営改革を取材して、その改革の本質を描いた1冊。


■破綻前の常識
更生計画を上回る業績を達成したJALだが、破綻前は以下の常識にとらわれていた。

①ナショナル・フラッグ・キャリアはつぶれない
②メンテナンス部品はすべて新品でなければならない
③コストの必要性を疑わない
④事業計画は自分たちがつくった計画ではない
⑤他部門は別会社
⑥顧客よりもマニュアル
⑦経営は経営、現場は現場

これらは、一般的な多くの日本企業に共通する課題としてとらえる事ができる。ここから6つの基本的な経営課題が抽出できる。

・経営基盤の課題
①価値観の共有ができていない
②現場の経営参画意識が乏しい
③経営と現場に距離感がある

・現場の課題
①顧客視点に立っていない
②現場のリーダーシップの不在
③横のリーダーシップの不在

超短要約

■V字回復の概要
JALは、2010年1月に経営破綻し、上場廃止となった。約44万人もの株主が持っていた株券は紙くずとなり、金融機関などは5215億円の債券放棄を余儀なくされた。JALの経営は、破綻直前に急激に悪化した訳ではない。2002年度から破綻直前まで、7期中4期は、連結最終利益で赤字を計上している。JALの危機は、はるか以前から始まっていた。

更生計画での黒字転換は、大幅な人員削減や給与カット、周辺事業の切り離しといったリストラを行う事を前提にしたものだった。外部から見る限り、そのハードルは極めて高いものだったが、9つの施策が着実に実行された。

①航空機機種数の削減
②赤字路線からの撤退
③子会社売却
④組織体制の改正と収益責任の明確化
⑤空港地上業務のコスト構造改革
⑥オフィススペース見直し
⑦人員削減
⑧年金給付水準の引き下げ
⑨各種コストの圧縮

この結果、2011年度の連結営業利益は2049億円を稼ぐとともに、営業利益率は17.0%と大手航空会社の中で卓越した水準となった。会社更生手続きから、わずか2年8ヶ月、JALは東京証券取引所に再上場を果たした。

■JALを再生させた5つの鍵
こうしたV字回復を可能にしたのは、稲盛氏の強力なリーダーシップである。意識改革を推進し、トップから現場社員まで同じゴール、ベクトルを持って業務に取り組むようになった。さらに「部門別採算制度」という仕組みの導入により、全社員の採算意識が格段に高まった。経営数値が見える化される事で、責任の所在が明確になった。さらに、お客様という視点を持つ事が徹底された。お客様のために何かできないか、自発的に社員がそれを探すようになり、そのサービスを実現するために普段の業務に「ひと手間かける」ことを厭わなくなった。

JAL再生の成功の鍵は、次の5つにまとめられる。

①衆目にさらされての再生(会社更生法の適用)
②稲盛氏のリーダーシップと社内の共感(リーダー教育)
③価値観を共有する仕組みや仕掛け(JALフィロソフィ)
④社員が共有できる管理会計の仕組み(部門別採算制度)
⑤新しい価値観に基づく社員一人一人の行動(新しい企業文化)

今回のJALのケースを分析すると、企業の改革を成功に導くには、大きく3つの要素がある。それは「リーダー」「企業文化(価値観)」「社員の共感」である。

著者 引頭 麻実

1962年生まれ。大和総研 執行役員 コンサルティング本部副本部長 大和證券へ女性総合職一期生として入社。電機セクターの証券アナリスト、ストラテジストを経て、投資銀行業務に従事。2009年大和総研 執行役員、2012年2月より現職。 公認会計士・監査審査会委員、官民競争入札監理委員会委員、企業会計審議会臨時委員、原子力損害賠償支援機構運営委員会委員。公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。

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章の構成 / 読書指針

章名 開始 目安 重要度
はじめに p.3 3分
第1章 更生計画を上回るV字回復 p.15 28分
第2章 管理者ではなく、リーダーであれ p.57 28分
第3章 部門別採算による意識改革 p.99 18分
第4章 トップが現場に出向く p.127 17分
第5章 マニュアル主義から考える現場へ p.153 14分
第6章 価値を生みはじめたバリューチェーン p.175 12分
第7章 改革に死角はないか p.193 28分
終 章 JALを再生させた5つのカギ p.235 5分
おわりに p.243 3分
巻末資料 p.248 12分

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