元米国弁護士から、応募により最年少の高校校長となった著者が、グローバル人材を育成するために行っている教育改革を紹介。国際社会で戦える人材はどのように育てていくべきか?
■日本式では伝わらない
「強い国」を構成するためには「グローバル人材」の育成が不可欠である。グローバル人材とは「異なる文化、宗教の人々と最大公約数的な理解のもとに共存できる人材」と定義される。最大公約数的な理解とは、互いに完全には一致しない異なる考えの中で、最大限共通する項目を見出し、理解し合う事を意味する。
文化、言語、宗教が異なれば、どうしても当事者間に重ならない項目が生じる。従ってその違いを互いに認識しつつ、これをどのように友好的、建設的なアイデアをもって埋めていくかという考えに到達せざるを得ない。
米国では、個人の利害が衝突した瞬間、「情」よりも「個人の利益保護」が優先される傾向にある。中南米、中国、韓国、中東の人々も相当に自己の利益を追求し、そのための自己主張を怠らない。
「沈黙は金」と言われる日本のような国は大変稀な存在であり、世界の考え方の基準は「雄弁は金、沈黙は相手にされない」というものである。そうであるなら、「雄弁は金」方式で、日本という国を伝えていかねば決して日本人は理解されない。
■世界で必要なコミュニケーションの形
欧米では、すぐに利害の対立が自己主張という形で現われ、頻繁に議論がなされるが、人格や価値観を否定するのではなく、相手の利益、不利益を提示する事によって自己の利益を実現しようとする。人格や価値観の否定をせずに、相手を説得するには2つの方法しかない。
①相手の自己利益を別の方法で満たしてやる新しいアイデアを提示する
②自分と争うと、あなたはかえって損失を受けるという指摘をする
文化や宗教を異にする人々に対しては、言葉や態度で明確に自分を表現しない限り、そもそも何を考えているのかすら、相手に伝わらない。
「グローバル化」は日本国民すべてを覆い尽くそうとしている。日本の学生を教育する際には、「うちの学校は隣の学校よりも進学率が高い」という視点では時流にとり残されてしまう。「世界の子供たち、若者と比べて、うちの学校の生徒はどこまで通用する学力、人間性、体力を備えているか」という「グローバル」な視点こそが、今の学校教育に要求されている。
■大阪府立和泉高等学校のグローバル人材育成への取り組み
・既存の教科書を使わない、TOEFLを学ぶための教材を使った英語クラスの創設
・TOEFLによる英語教育を行う先生同士の研究会の立ち上げ
・論理的思考力を軸に表現力を養うための総合学習の導入
・プレゼンテーショ力を養成する授業の導入
・長期留学生を招き、外国人と触れ合う機会を創出
著者 中原徹
1970年生まれ。大阪府立和泉高等学校長 弁護士 早稲田大学法学部卒業後、日本の司法試験に合格し、弁護士として東京永和法律事務所に勤務。その後米国ミシガン大学ロースクールに留学し、ニューヨーク州とカリフォルニア州の弁護士資格を取得。 米国大手法律事務所(Pillsbury Winthrop Shaw Pittman LLP)のロサンゼルスオフィスに勤務し、パートナー(共同経営者)を務めるまでになる。2010年4月、民間人校長として大阪府立和泉高等学校に赴任。当時の全国最年少校長となる。
日経ビジネス |
帯 東京都知事 猪瀬 直樹 |
週刊 東洋経済 2013年 3/9号 [雑誌] |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.3 | 3分 | |
Part1 “ゲリラ校長”の誓い | p.15 | 33分 | |
Part2 「国際的日本人」を作る条件 | p.67 | 112分 | |
終わりに | p.245 | 1分 |