鳶・土工 井上和之
仕事のやりがいなんて言う人は、そもそもこの世界に入ってこないんじゃないのかなぁ。そんな事考えたら、この仕事はできないですよ。若い人には、こういう仕事をしていても、ちゃんと働いていればちゃんとした生活ができるんだという事を感じてもらうこと。それしかないです。
解体工 村上文朗
解体業と聞くと、荒くれ者が適当にぶっ壊しているイメージなのかもしれませんが、実際にはこれほど気を遣う仕事はない。解体って、敷地をきれいにしてスタートさせる建築の最初の工程になるんです。解体業者のイメージが悪いと、その後の工程に入ってくる職人たち全員のイメージが悪くなる。だから、とにかく近所の人を大事にするんです。
ALC建て込み 小堺恒昭
ALC(軽量気泡コンクリート)の魅力は、やっぱ仕事が残る。これでしょうね。ALCって一度張ったらそのまま外壁になって外から見えるじゃないですか。子供に見せられる仕事っていうんですか。そういうのはやっぱいいもんですよ。
ウレタン吹き付け 大沢大嗣
ウレタンは、その日の気温、現場の階数、延ばしたホースの長さ、吹き付けるスピードなどあらゆる要素を踏まえて発泡機の状態を調整してからでないと、均一に吹く事ができません。ウレタンの吹き付けに関しては、師匠が弟子に教えられる事ってほとんどないんですよ。自分が現場で経験を積んで学んでいくしかない、量をこなす事で質を上げていくしかない。
防水工 古田崇
いまだに防水が天職とは思いませんね。外でやる仕事だから梅雨の時期はどうしても仕事が減るでしょ。「やっぱり内装屋になれば良かったかな」なんて思う日もありますよ。流されるようにして辿り着いた仕事なんでね、今は毎日淡々と続けているだけです。
板金工 下田守広
腕のいい職人は世の中にいっぱいいますよ。ただ危惧しているのは、腕のいい職人達の技術が次の世代にきちんと伝えられていないのではないかという事です。自分の技術を弟子にしっかり伝えている人って、実はものすごく少ないんです。自分はたまたま父の跡を継ぐ形で板金屋になりましたけど、そこには家業を継ぐ以上に、板金の技術をつなぐという意味もあったのかなぁと、近頃思い始めているところです。
給排水設備 小池猛
大工なら100本のうち1本くらい釘を打ち損ねても致命的な問題にはならないでしょう。でも、給排水設備はたった1本の配管をミスしただけでもアウト。天井から水が漏れてきます。施主からは人殺しを見るような顔で睨まれる。ただ、設備屋の唯一のプライドとでもいうのかなぁ、個人的には、我々が1本1本心臓から血管をつないでいくように、建物を血の通ったものにしているんだという思いね。それがあるから、なんとか40年近くこの仕事をやってこれた気がしています。