会社が長く存続する鍵は、経営革新と後継者の育成にある。7つの事業承継の事例を紹介しながら、中小企業の後継者はどのようにして、経営革新に取り組むべきかを、わかりやすく解説している。
■企業が継続するには革新が必要
日本の中小企業の数は420万社。これらの企業の半分は、寿命が20年以下、残り半分は20年以上の寿命があるが、100年以上の寿命の企業はせいぜい数%しかない。
研究の結果、長く継続している企業では「伝統を継承しつつ、革新に取り組む」経営が行われている事がわかった。伝統とは、例えば、顧客第一主義、品質本位など。革新とは、例えば顧客ニーズに合った商品開発、新市場の開拓などである。この二つをバランスよく取り込んでいく事が企業長寿の秘訣である。
■後継者の育成が大切
1990年代以降、2代目以降の後継経営者の倒産が増えている。その大きな理由は、円高、グローバル化など、経営環境が一段と厳しくなったからである。また、多くの中小企業が後継者問題に悩んでいる。
後継者を育てるには、「後継経営者の役割」をはっきりさせ、そうした役割を果たせるような後継者を育てるべきである。後継経営者の役割は次の3つ。
①会社を潰さないこと = 利益を出し、資金・リスク管理を行うこと
②社員の力を結集させること = 時が解決してくれる
③経営革新を行うこと
企業継続のカギは「経営革新」と「後継者」にある。時代の変化に対応し、常に「経営革新」に取り組まなければ企業は生き残れない。そして、その経営革新を推進するのは経営者であり、「後継者」である。
経営革新は「売上を増やす」ものと「経営体質の強化」となるもの2つに分けられる。
①事業戦略における経営革新=売上を増やす
・新商品、新サービスの開発
・新しい販売チャネルの開発
・新たな顧客、市場の開拓
・新事業への進出
②経営システムにおける経営革新=経営体質の強化
・生産・流通方式の変更による大幅なコストダウン
・IT化等による大幅な業務改善、経営の効率化
・事業部制、持ち株会社制導入等の大規模組織改革
・人事制度の抜本的改革など
2つの経営革新は、バランスよく取り組む必要があるが、特に前者は最低でも数年の年月がかかるため、後継者はまず前者に取り組むべきである。
著者 久保田 章市
1951年生まれ。法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科教授 三和銀行・UFJ銀行(現三菱東京UFJ銀行)に30年間勤務、支店長・部室長7つを歴任。銀行員時代を含め1100人以上の経営者と面談。三菱UFJリサーチ&コンサルティング執行役員を経て、法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科教授。 専門は中小企業経営、経営者育成、地域経済など
週刊 ダイヤモンド 2013年 2/2号 [雑誌] |
日経トップリーダー |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.2 | 2分 | |
第1章 難しい企業の継続 | p.9 | 19分 | |
第2章 カギは経営革新と後継者 | p.41 | 23分 | |
第3章 事例にみる後継者の経営革新ストーリー | p.79 | 73分 | |
第4章 後継者の経営革新、成功の七つの法則 | p.201 | 21分 | |
あとがき | p.236 | 1分 |
商売繁盛・老舗のしきたり (PHP新書 525) [Amazonへ] |
倒産の研究―「金融ビッグバン時代」を勝ち抜くために (Nikkei venture books) [Amazonへ] |
デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21) [Amazonへ] |
ドラッカー名著集2 現代の経営[上] [Amazonへ] |
イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press) [Amazonへ] |