課長時代にストレス耐性を身につけよ
社長になる人間にはそれなりの能力がある。しかし、その能力を発揮できるかどうかは、ストレス耐性に大きく左右される。部長や課長にもストレスはあるが、社長になった時の比ではない。だから、課長の時に責任転嫁ばかりしている人、ストレスから逃げてばかりの人は、それより上のポジションに上がった時に使い物にならない。
課長というのはトップリーダーになるための訓練の場でもある。意識して自分をストレスフルな立場に置いてみるくらいの事をやっておいた方が良い。
論理的な思考力、合理的な判断力が不可欠である
リーダーの不可欠な資質の一つは、論理的な思考力、合理的な判断力である。リーダーは様々な局面で判断を求められる。必要な情報を集め、それに基づいて行った判断が合理性に耐え得るか、自分の中で繰り返し問うてみる。そういう訓練をする事が大事である。
会社が潰れる時、多くの場合、経営判断を情緒的直感に委ねている。論理的に考えてこのままだと会社は生き残れないという状況で、都合の悪い現実に目をつぶって、頑張っていれば事態は好転すると考える。そうすれば、誰もリストラせずにすみ、仲間から非難される事もない。論理を突き詰めるより、情緒的直感に飛び込んでしまった方が精神的に楽なのだ。それで倒産してしまう。
マネジメントの世界では、合理的思考を突き詰める事は、結局リアリズムを突き詰める事につながる。経営を、人間を幸福にするツールとして機能させるには、リーダーが、リアリズムと合理主義に徹する事が絶対必要条件となる。
コミュニケーションは情に訴え根負けを誘う
意思決定の段階においては情緒を極力排除しなければならないが、コミュニケーションの段階で情緒を否定してしまうと、伝わるものも伝わらなくなる。組織内で合理的な判断を貫こうと思うと、情緒的な反発が起こる事もよくある。特に改革の名に値するような重大な決断ほど反発は強くなる。
アメリカ型の上意下達で雄弁なコミュニケーション・スタイルが日本の会社でも通じるのは、創業者のように絶対的な権力を持ったトップがいる会社か、経営が破綻して企業再生の段階に入った会社のどちらかだ。多くの人は組織の空気を読む、付和雷同型である。
だから、トップのコミュニケーションには、組織の空気を少しずつ変えていく根気強さが必要だ。リーダーは、反対派を一人ひとり根気強く説得していく。ここで、論理を振りかざしても余計に反発を招くだけなので、しつこく情緒に訴えるのだ。夜の「飲みニケーション」を含め、朝から晩まで訴える。やがて相手が根負けしてくる。シーソーが少しずつ賛成派に傾き始め、臨界点を超えるとバタンと大きく傾く。