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顧客を細分化しても成功しない

衣料品販売大手のギャップは主流文化の崩壊に直面した小売業者の一つである。2000年前後になり、大量に展開した店舗から若者が離れていくと、彼らは万人向けに作られたものは長続きしないと思い知らされた。平均的な消費者など、現実には存在しないのだ。危機に陥ったギャップは、あらゆる消費者を取り込もうとした。まずは流行に敏感で移り気なティーンエージャーを取り込み、それから同社を愛用してくれている中年層に改めて取り入ろうとした。

しかし、あらゆる層を取り込むつもりが、結局は、誰の関心もひかないブランドという印象を世間に与えただけに終わった。そこで呼ばれたのが、マーケティング業界のカリスマ的存在であったポール・プレスラーだった。2002年9月、プレスラーはCEOに就任すると2年をかけて、様々な調査を実施した。そうして集めたデータをもとに、顧客を年齢や性別、各自の価値観に応じてグループ分けを行った。「流行のスタイルを重視するタイプ」か「定番のスタイルを重視するタイプ」かという具合だ。

プレスラーは、膨大な調査結果を使って、ブランドフォーカスの精度を高めたいと考えていた。調査の数字からはじき出した答えは、ギャップ、そして傘下ブランドのオールド・ネイビーとバナナ・リパブリックという3つの主力ブランドの区別がつきづらいという事だった。そこでプレスラーは、3ブランドの区別を明確にするため、価格設定や年齢層の照準を見直した。

最初の2年ほど、彼の戦略はうまくいっていた。しかし、2004年の秋になると、ギャップの3ブランドの売上は下降線を辿り始めた。再び数字を上げるため、プレスラーは各ブランドを見直して顧客をさらに小さく狭い容器に移そうとした。だがそれには、ターゲットに含まれる人を不快にさせ、含まれない人には疎外感を与える危険が絶えずつきまとった。年齢に応じてターゲット層を分割し、それぞれにブランドを提供した事で、メインブランドであるギャップの売上を食う結果を招いた。

数十年にわたり、ギャップは万人のためのブランドとなる事で、市場の真ん中とつながる架け橋を築いてきたが2000年以降、その橋に亀裂が生まれ、顧客は未だに流出し続けている。

ニッチを見つけた者が生き残る

プレスラーが狙いを定めた若者達の多くは、怪物にターゲットにされる事にうんざりし、ストリートに目を向けるようになった。それがここ十数年でサブカルチャーとして成長した。

今、あらゆるものが新しく生まれ変わろうとしている。生き残れるかは、自分が心から夢中になれる何かを見つけて、それを育てていけるかどうかにかかっている。自分の居場所だと明言できるニッチを見つければ、あとは勝手に人が集まってくる。