日本人のメンタリティを変える
こう思うきっかけは、シリコンバレーでベンチャー支援をした経験だった。シリコンバレーには、日本人のように大企業に入れば一生安泰で幸せな人生が送れると思っているような人間は、一人もいなかった。誰もが、自分もスティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグになれると本気で信じ、アイデアをメモし、それをビジネスモデルに落とし込み、投資家への売り込みに余念がない。そして、毎日のように新しいベンチャー企業が生まれている。
この違いはどこから来るのか。日本には成功事例が少なすぎるのだ。シリコンバレーの住人はアップルやグーグルの誕生から現在までの軌跡を、間近に目にしてきている。日本からも、松下幸之助や盛田昭夫といった起業家が何人も出ているが、それは半世紀も前の事だ。現代のビジネスパーソンがリアリティを感じられるはずもない。
だからこそ、誰かが「野茂」にならなければならないのだ。同じ日本人が世界という舞台で活躍する姿を見れば、それに刺激を受け、後に続く人間が必ず現れる。
天井を叩き壊せ
「なぜ日本からアップルやグーグルのような企業が出てこないのか?」と質問される。答えは簡単、起業の絶対数が少なすぎるのだ。日本では優秀な学生ほど、大手企業にすんなり就職してしまう。いい大学を出て民間に就職するなら、就職先は一部上場企業が常識で、テラモーターズのようなベンチャーを選ぶと「非常識」という事になってしまう。
かつては、この常識にもいくらか合理性があったかもしれないが、グローバル競争下では、大企業だって決して安泰ではない。日本では、就職といえば、既に存在している会社に入ることだと思っていて、最初から起業という選択肢が抜け落ちてしまっている人が多い。日本人は、周りに成功事例がないから自分には無理だと勝手に見えない天井をつくっているが、天井は叩き壊してしまえばいいのである。
安定したいのなら、自分自身に投資をして、スキルや能力を高め、どこでも稼げる力を身につけてしまうしかない。
失敗は成長機会である
日本のビジネスパーソンの基礎能力は、世界で見てもかなり高い。ところが、社会人になってからの伸びしろが少ない。それは、失敗を単純にマイナスとして評価してしまう日本人の価値観が、最大の元凶となっている。
失敗が怖いからといって目の前の変化に目をつぶり、新しい事に挑戦しない人間は、時代に置いていかれ、あっという間に淘汰されてしまう。つまずいてケガをしながら、必要なものを一つひとつ獲得していく。そういう「らせん状」の上昇でしか人は成長する事はできないのである。