電動バイクで世界に挑むベンチャー経営者が、萎縮した日本人は、どのような思考をすべきかを書いている。シリコンバレーの考え方、世界で闘う中で気が付いた日本について紹介しながら、起業家精神の大切さを啓蒙する1冊。


■「アップルを超える企業になる」
テラモーターズのオフィスには創業以来、この言葉が掲げられている。当社は2010年に創業したばかりで社員は現在16名。本社は渋谷の雑居ビルにある四畳半ほどのレンタルオフィス。しかし、アップルだって第一歩を踏み出したのは自宅のガレージではなかったか。

私はテラモーターズを、必ず電動バイク界のアップルに育て上げるつもりだ。既に創業2年目には約3000台を売り、国内の電動バイクメーカーのトップとなった。だが見据えているのは、国内のシェア争いではない。メガベンチャーの足がかりといえる、フィリピン、ベトナムといったアジア諸国への進出なのである。

私は電動バイクこそが世界で勝負できる製品であり、日本からメガベンチャーを誕生させる大きなチャンスがEV業界には、あると確信した。メガベンチャーを日本に立ち上げ、日本人の萎縮したメンタリティを180度変更する。

■今、日本人が海外で戦うために必要な発想
・仕事を問い直す
仕事というものはつまらないだとか思っているなら間違いだ。新しい事に挑戦すれば、必ずそこには胸を躍らせる発見がある。そういう機会を与えてくれるのが仕事である。

・目の前の「安定」を疑ってみる
グローバル競争下では、大企業だって決して安泰ではない。安定したいのなら、自分自身に投資をして、スキルや能力を高め、どこでも稼げる力を身につけてしまうしかない。

・「スピード」の価値を知る
日本企業が世界で勝てない最大の理由はスピードだ。シリコンバレーでは、成功確率が6割を超えたら誰もが動き出す。どんなに情報を集め、計画の精度を上げたところで、社会の変化が激しい現代においては、実際にやってみなければわからないからだ。

・「自分には無理」というみえない天井を叩き壊す
シリコンバレーには、枠に収まろうという人はいない。どれだけ枠をはずれた発想ができるかを、みんなが競い合っている。日本人は「自分には無理だ」と勝手にみえない天井をつくって、縮こまっている。だから、その天井を叩き壊してしまえばいいのだ。

・「失敗から多くのことが学べる」という感覚を持つ
起業して失敗しても、それによって多くのことが学べることを考えると、失うものよりも得られるものの方がはるかに多い。

・起業家精神を持つ
起業家精神とは、大勢に流されず、執念を持って自分の信じた道を進むということだ。人と違うことを恐れない勇気と言い換えてもいいかもしれない。

・将来何で食べていくのか常に考える
日本の大学生にあるのは、就職はゴールであるという考え方であり、そこから自分の人生をどのようにデザインしていくかとかに無頓着。それでは生き方そのものを会社に決められてしまう。

・加速度的成長のために能力以上のことをやる
失敗は、自分にどんな能力やスキルが足りないのかということを、正確に教えてくれる。

・リスクのプラス面にも目を向ける
シリコンバレーでは、リスクはチャンスと同義である。リスクが拡大すれば、当然マイナス方向への振れ幅は大きくなるが、同時にプラス方向への振れ幅も広がる。つまり、より大きな成功を手にできる可能性も高まる。

・サムシング・ニューを常に探し続ける
常に「何か新しいことはないか」「別のやり方はできないか」と問い続けなければならない。もっとも、考えたところで簡単には「サムシング・ニュー」は見つからない。それでも徹底的に考え抜くことが大切である。

・心からやりたいことをやる
得意なことより心からやりたいことに取り組む方がいい。どうすればモチベーションを持続させられるかといったら、やはり寝ても覚めてもそれがやりたいと思うことを仕事にするのが一番だ。

著者 徳重徹

1970年生まれ。Terra Motors株式会社代表取締役 住友海上火災保険株式会社(当時)にて商品企画・経営企画等に従事。 退社後、自費留学にて米Thunderbird経営大学院にてMBAを取得、シリコンバレーに渡り、コア技術ベンチャーの投資・ハンズオン支援を行う。 帰国後、2010年4月にTerra Motors株式会社を設立。設立当初からグローバル市場で戦うことを前提に事業を進め、電動バイク、電動シニアカー市場で設立から2年で販売台数4000台を達成。国内のリーディングカンパニーの地位を築く。