カリスマバイヤーが、売れる商品開発、売り場のつくり方を徹底解説。どのようにして顧客の心理を読むのかを具体的に紹介している。特に小売店のバイヤー、店長などに役立つ実践的な内容。
■大衆など存在しない
バイヤーは思い込みや勘違いをする人種である。基本的には店舗経験があり、優秀な成績を残した人が抜擢される。しかし、本部に配置された瞬間に現場の「肉体感覚」を置き忘れ、思い込みや、古臭い固定概念やセオリーでお客様の幻を見てしまう。
多くのバイヤーは、自分の食べたい、使いたい商品ではなく、頭で考える「大衆」が喜びそうな商品を選ぶ。しかし、ニーズも嗜好も多様化している今の日本に「大衆」など存在しない。もっと生活感を持って、自分の生活に照らして品揃えする必要がある。思い込みや勘違いをしていないかは、POPを見れば一目瞭然である。
①「お盆には家族そろって焼肉を!」
もはや焼肉は豪華なハレの日の特別な料理ではない。主婦にとっては「焼肉」は手軽な手抜き料理の代表的なメニューでもある。「自分でつくる簡単秘伝タレ!」といった切り口を明確にした方が売れる。
②「パーティーメニューのお供に!」
そもそも「パーティー」は頻繁に開いているのか。どんな目的や場面で集まるのかをイメージして、ターゲットを絞ること。「ワイガヤ」「女子会」「家飲み」では、当然、目的もメニューも違う。
■商品は絞り込むな
品目数はあればあるだけいい。お客様は比較してから買いたい。ブランド、産地、量目、グレード、用途、フレーバーなどの違いを比べて、買う商品は変化する。但し、その一つの違いがお客様に明確に伝わっていなければならない。そうでなければ類似アイテムばかりで「商品はなんかたくさんあるけど、私の欲しい商品はない」となってしまう。
バイヤーの中には、ABC分析で売れ筋上位品目だけに絞り込む人がいる。しかし、これはなんの意味も持たない。ABC分析は「今ある商品の中でのデータ」に過ぎず、本来、品揃えしていれば売れたかもしれない商品のデータはない。さらに上位品目だけに絞るという事は、どこの店も同じ品揃えになってしまう事を意味する。
小売業の品揃えは8割方どこも同じである。しかし残りの2割がちょっとずつ違う。その「ちょっと」にこだわらなければならない。この2割の違いにお客様は他店との違いを見出すのである。
■「勝ち馬商品」に乗る
バイヤーにとっての「勝ち馬」とは、新商品や話題商品などで特にメーカーが力を入れて販売しようとしている商品である。「社運を賭けて」とか「今期のいち押し」と明確にしている商品群である。
もちろん、味や価格など自分の好みでない場合もあるが、無条件にいち早く取り組むべきである。「社運を賭けた商品」や「今期のいち押し商品」には「人」「物」「金」すべてが出るからである。「社運を賭けた商品」には潤沢な予算がある。さらにそれを売り込むことによって、メーカー営業担当者の社内の評価が高まり、良き協力者になってくれる。試食サンプル、マネキンでの宣伝販売、販促グッズや消費者キャンペーンなどあらゆるイベントを実行すること。
■10倍以上売る
重要視するべきは販売開始日である。「垂直立ち上げ」と命名し、全店一斉販売を基本として各店を競争させる。最初に全エネルギーを集中させること。スタートダッシュができれば、あとは雪だるま式に大きな成果に自然となる。
垂直立ち上げのスタートは「異常値」を狙う。通常の2割増し、3割増しではなく、10倍、20倍売るにはどうするかを店舗担当者に考えてもらう。2割増し程度ならPOPをつけるだけで売れても、10倍、20倍は、普通の事だけしていては売れない。そこでみんな考える。どんな殺し文句をPOPに書き込むか?演出はどうするか?BGMや匂いが出る仕掛けはないか?この自分で考える事がポイントである。
「垂直立ち上げ」を行った翌日は、必ず各店ごとの販売実績をチェックする。販売好調な数店舗にすぐ電話し、販売方法を教えてもらうのである。そして全店に販売好調店舗のやり方を真似させる。
著者 高田 英男
1956年生まれ。株式会社Mission01代表取締役 1979年イズミヤ株式会社入社。店舗担当者を経てバイヤーに。 1995年最年少部長として日配部長就任、ロジスティクス統括部長、執行役員食品統括部長、商品統括部長、eコマース統括部長などの要職を歴任し、売り場づくり・商品一括仕入れ・流通改善・PB商品開発・経営計画作成・ネットスーパー実務などスーパーのあらゆる現場を経験。 「お客様心理」を読んだユニークな仕掛けで売上に貢献し、「カリスマバイヤー」「カリスマ部長」として知られる。 2012年イズミヤ退社後、株式会社Mission01を設立。 小売業の営業活動・商品販売促進や製造業の商品開発に関しての指導、人材教育や研修会での講演活動などを通じて、「真の豊かな食生活」の実現を目指す。
帯 味の素 社長 伊藤 雅俊 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
第1章 思い込みを捨てれば、10倍売れる | p.11 | 16分 | |
第2章 売れる商品と売れない商品を見極めれば売れる | p.41 | 15分 | |
第3章 店頭を見るルーチンを身につければ売れる | p.69 | 13分 | |
第4章 タブーを飲み込めば日本一売れる | p.93 | 11分 | |
第5章 小売り・卸・メーカーでチームをつくれば売れる | p.113 | 11分 | |
第6章 品揃えと売り場を見つめ直せば売れる | p.133 | 13分 | |
第7章 販売計画と販売促進活動を見直せば売れる | p.157 | 12分 | |
第8章 このキーワードとトレンドを狙えば売れる | p.179 | 10分 | |
第9章 商売哲学を持ち続ければ売れる | p.197 | 14分 |
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