深海底には何があるのか
海底資源には、これまでの調査、探鉱で主に5種類の資源が眠っている事がわかっている。
①マンガン団塊
主成分はマンガンであるが、銅、ニッケル、コバルトなど有用金属を含む。東太平洋、ハワイ沖東南東の公海、4000〜6000mの深さの海底表面に広範囲に堆積している。各国が鉱区を取得している地域のマンガン団塊中の銅資源量は、世界需要の35年分に相当する。但し、深いところに分布している事もあり、開発の優先順位は高くない。
②熱水鉱床
含有する主な有用金属は銅、鉛、亜鉛といったベース・メタルに金、銀も含まれる。鉱床の水深は700〜3000mで、海溝にプレートが沈み込むために海底が拡大して軸にそって熱水が噴出している。
③コバルト・リッチ・クラスト
鉱床は厚さ数mmから十数cm、水深800m〜2500mに分布している。コバルト、ニッケル、マンガンなどのレア・メタルの他に銅、レアアース、プラチナなども含まれ「レア・メタルの宝庫」と言われている。
④レアアース泥
太平洋に全く新しいタイプの資源として泥状のレアアースが海底に広く堆積している事がわかった。海底資源全体としては、陸上の総資源量より多いという。
⑤メタン・ハイドレード
近年、日本近海の深海底に、わが国の天然ガス消費量の約100年分に相当するメタン・ハイドレートが眠っている事で話題に上がる事が多くなった。
オーシャン・メタルの時代
パプア・ニューギニアの領海内1600mの深海底で、銅、金、亜鉛などを採掘する、人類最初のプロジェクトが動き出した。陸上資源開発のリスクとコストを考えると、深海底が射程距離に入ってきたという事である。世界の各国が国益をかけて探査と開発にしのぎを削り、一方では多国籍資源メジャーの資金的サポートを得て探鉱会社が探査と開発準備を進めてきた。特に太平洋では、ハイテク・ゴールド・ラッシュの様相を呈し始めている。
商業生産が射程距離に入ってきたのが、パプア・ニューギニア北東側内海の鉱区「SOLWARA1」。探鉱会社ノーチラス・ミネラル社は2014年に開発・生産開始を目指している。いまや、太平洋をはじめ世界の海洋では鉱物資源の権益確保と技術的優位性確保合戦が始まっている。
オーシャン・メタルに経済性はあるのか
これまでに得られた情報によって、いま信頼性の高い経済性を評価するのは不確実な要素が多いため難しい。しかし、陸上資源は限界が見えてきた。確かにリスクは大きいが、リスクを取らないリスクが大きくなってきたのではないか。
ノーチラス・ミネラル社の「SOLWARA1 」プロジェクトの試算では、年間生産量の鉱石価値約758億円、生産コスト約75億円となり、精錬費を加えても固定費は回収できるのではないか。