持続的成長の鍵は、自社の成功体験の中から「再現可能」な勝ちパターンを抽出し、それをできるかぎり単純化して、徹底する事にある。コンサルタント会社ベイン&カンパニーの研究調査によって、明らかになった持続的成長企業の法則が紹介されている。
■変化しつつある戦略の本質
かつて、企業成長における3つの手段は「コア事業における市場シェアと利益シェアの増大」「周辺領域への拡大」「ビジネスモデルの再定義」を指し、これを「集中ー拡大ー再定義」の成長サイクルと呼んだ。
しかし、ビジネスにおける戦略の性質そのものが抜本的に変わりつつある。かつては恒久的な競争優位性の源泉とされた「市場のポジショニング」「独創的な製品」「強力なブランド」「顧客との深いリレーション」が多くの業界において一過性のものとなり、その結果として、過去10年間で一定水準以上の利益を伴う持続的成長を実現させたグローバル企業は、全体のわずか9%ほどであった。成功に至る戦略の本質は、変化を遂げている。
■結論
①市場のスピード、激しい変動、複雑性によって、企業戦略の本質は根本的に変化している。変化が速く複雑な今日では、あらゆる可能性を予測する能力よりも、変化を察知し対応する能力を追求する方が現実的である。
②本質的に、組織は複雑化に対処するために、ますます複雑化する傾向を備えている。過度の複雑化は、社内のプロセスや他企業との関係性、顧客に悪影響を与える。成長が引き起こす複雑化は、将来的に成長のサイレントキラーとなり得るが、その抑制に役立つのが再現可能なビジネスモデルである。
③偉大な成功を繰り返し重ねるための最良の方法は、再現可能なビジネスモデルを構築する事である。
④再現可能な不朽のビジネスモデルは「三大設計原則」に準ずる。企業間の業績の差は、三大原則を遵守しているか否かで、そのほぼ半分が説明できる。①明確に差別化されたコア事業とその反復を可能とする行動システムがある事、②戦略を現場に周知させるための「絶対に譲れない一線」がある事、③学習と適応を推進するシステムがある事。
⑤継続的な改善こそ、再現可能なビジネスモデルの最大の強みである。当初はわずかであった改善能力における企業間の差が、時の経過と共に拡大する。
⑥最も効果的な戦略とは、末端から組織を引き上げる戦略である。「譲れない一線」は、企業戦略を重要原則に落とし込み、行動や意思決定の指針となって、こうした戦略を支えてくれる。
⑦形骸化は、再現可能なビジネスモデルの価値を破壊する隠れた要因である。
⑧行き詰まりや戦略上の失速の多くは、コアモデルを早まって放棄してしまう事が原因である。これらの背景には、ポテンシャルを見抜けなかった、飽きた、自信過剰などの人為的過失がある。
⑨「急進的な戦略の再定義」による救急措置のほとんどは失敗に終わる。再現可能なビジネスモデルは、慎重な対策を早期に講じ、再定義が必要な状況に陥る事を未然に防ぐ。
⑩再現可能なビジネスモデルの大前提は、徹底したフォーカスと継続的な適応のニーズを組み合わせる事である。
著者 クリス・ズック
ベイン・アンド・カンパニー パートナー コンサルティング企業「ベイン&カンパニー」のグローバル戦略プラクティスの共同総責任者を務める。情報、ヘルスケア、コンピュータ、ベンチャーキャピタル等の幅広い業界において、企業が利益を拡大させる持続可能な成長の新しい源泉を追求するプロジェクトに携わる。 英タイムズ紙が選出する「世界で最も影響力のあるビジネス思想家50人」の1人
著者 ジェームズ・アレンベイン・アンド・カンパニー ロンドンオフィス パートナー コンサルティング企業「ベイン&カンパニー」のグローバル戦略プラクティスの共同総責任者を務める。1989年にベインに参画。20年以上にわたり、消費財、燃料、通信、ヘルスケア等の分野において、主に多国籍企業のクライアントに対するコンサルティングに携わる。ロンドンオフィスでは、消費財及び戦略プラクティスの立ち上げに携わる。
TOPPOINT |
PRESIDENT (プレジデント) 2013年 1/14号 [雑誌] |
週刊 東洋経済 2013年 1/19号 [雑誌] 福井県立大学地域経済研究所所長 中沢 孝夫 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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序文 | p.7 | 3分 | |
第1章 再現可能な不朽のビジネスモデル | p.19 | 33分 | |
第2章 原則1 明確に差別化されたコア事業 | p.69 | 31分 | |
第3章 原則2 絶対に譲れない一線 | p.117 | 39分 | |
第4章 原則3 循環型学習システム | p.177 | 33分 | |
第5章 リーダーシップ フリーダムかフレームワークか | p.227 | 29分 | |
第6章 「単純さ」の勝利 | p.271 | 12分 | |
第7章 日本企業への示唆 | p.289 | 22分 | |
付録 | p.323 | 24分 |
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