かつてアメリカで開発されたコンビニ業態は、日本で大きく深化を遂げる。日本のセブンイレブンは、経営に行き詰まったアメリカのセブンイレブンを経営再建する。どのようにアメリカのセブンイレブンの再建はなされたのか?
■米国セブンイレブンの経営破綻
元々、日本を含めて世界のセブンイレブンの営業ライセンスは、アメリカのセブンイレブンの本部企業「サウスランド社」によって与えられたものである。サウスランド社は、ピーク時には8200店舗を超える店舗を持ち、1982年には売上で全米小売業ランキング10位以内に入る巨大流通企業であった。しかし、同社は以下の要因で経営破綻する。
①スーパーとの価格競争に巻き込まれ、コンビニ事業が不振に陥った
②政府による宇宙開発予算の時限凍結により、地元テキサス州の巨大な地域開発プロジェクトが打撃を受けた
③ガソリンスタンドにコンビニを併設する形で事業展開し、自ら石油卸事業に進出したが、石油価格の大暴落で巨額の負債を抱える事になった
当時、アメリカではサウスランド社の再建は困難であると思われていた。その理由の一つは、時代の変化のもとで、コンビニが社会的な存在価値を喪失しつつあった事が挙げられる。石油販売業界からの参入なども増えて競争が過熱状況にあっただけでなく、スーパーマーケットなどが積極的に長時間営業に乗り出していたからである。
■変化するお客さまのニーズこそ最大の競争相手である
「変化対応と基本の徹底」、これは鈴木敏文の創業以来、一貫して変わらない不易の経営思想である。これこそが、日本のセブンイレブンの継続した企業成長を、劣化するビジネス環境のもとで可能にさせているものなのだ。
「我々の最大の競争相手は、同業の他社・他店ではない。変化するお客さまのニーズこそ、最大の競争相手である」
この言葉に、鈴木の考え方のすべてが凝縮されている。変化対応こそが、商売と経営のすべてである。いかなる状況の変化に対しても柔軟に対応・適応できる経営を理想とする鈴木は、そのために「基本」が重要であると強調する。
鈴木が大事にし、日本のセブンイレブンが依拠し続けた「基本」とは、「とことんお客さまの立場に立って考え、実践すること」である。これが言うところの「お客さま流」で、企業活動のすべては、「お客の立場」から発想され、そして実践されなければならないと言う。
この「お客の立場」に立脚した時に、セブンイレブンの「基本四原則」の徹底実践が、意義と意味を持ってくる。
①フレンドリーサービス
②クリンリネス(清潔さ)
③鮮度管理
④品揃え(欠品のない品揃え)
すべてお客の立場に立っての価値と満足に直結する。日本のセブンイレブンは、基本四原則の徹底とそのレベルアップのために、不断の努力を傾注し続けてきている。
品揃えに関しては、一年間に全体の品揃えの7〜8割が入れ替わるというほど、商品革新に取り組んでいる。お客の立場での満足度の高い品揃えを現実にするには、「誰が、何を、いつどんなタイミングで、どれだけ、どんな条件で」求めているかというお客のニーズとその変化を的確につかんでいなければならない。これを日々顧客と相対する個々の店がつかむため、世界最先端の「情報システム」の開発が、継続して進められている。
著者 緒方 知行
1939年生まれ。流通ジャーナリスト 「販売革新」編集長、「商業界」取締役編集局長などを経て独立。現在、バリュークリエイター社が発行する月刊誌「2020 Value Creator」誌の編集主幹。商業・流通分野のジャーナリストとして、セブン‐イレブン創業以来40年にわたって鈴木敏文氏の取材を続けている。
帯 セブン&アイホールディングス会長 鈴木 敏文 |
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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プロローグ | p.15 | 13分 | |
第1章 破綻、そして再建への着手―重なる不運と本業の不振 | p.35 | 11分 | |
第2章 再建への成算―コンビニエンスストアの時代は終わっていない | p.51 | 8分 | |
第3章 安売りをやめろ―脱タイムコンビニエンスへの妥協を許さぬ取り組み | p.63 | 15分 | |
第4章 お客さま流への意識改革―「ハリケーン鈴木」の企業構造改革 | p.85 | 19分 | |
第5章 発注権を店に委ねる―再建は従業員のモチベーションアップから | p.113 | 11分 | |
第6章 仮説・検証に基づいた単品管理―POSに頼らず道具として使いこなせ | p.129 | 11分 | |
第7章 マーケティング・カンパニーへの脱皮―世界最先端の総合店舗情報システム | p.145 | 12分 | |
第8章 新しいコンビニエンス価値の創造―マーチャンダイジング革新に向かって | p.163 | 9分 | |
第9章 若き経営陣の手腕―トロイカ体制で進むマーチャンダイジング革新 | p.177 | 15分 | |
第10章 再び飛翔へ―アメリカのセブン‐イレブンの可能性は広がる | p.199 | 8分 | |
エピローグ | p.211 | 9分 | |
あとがき | p.225 | 3分 |