日本は歴史上、開国と鎖国を繰り返してきた。安定した社会では、鎖国的な考え方も悪くない。日本は今や成熟社会であり、世界の先頭をいく素晴らしい国であると説くアンチ・グローバリゼーションの書。日本は外に出るべきか、内にこもるべきか。
■繰り返されてきた鎖国
日本の歴史を眺めてみると、日本は「開国的な時代」と「鎖国的な時代」を繰り返す事で、社会が変化し、成長してきたといえる。いわゆる「鎖国時代」は、江戸時代を指すと思いがちだが、必ずしもそうではない。日本では、鎖国的な時代が、何度も繰り返されている。
開国=古代(邪馬台国〜大和朝廷):仏教・儒教の伝来、遣唐使
鎖国=平安時代:遣唐使廃止
開国=平安末期(平清盛):日宋貿易
鎖国=鎌倉末期
開国=室町時代
開国=安土桃山時代(豊臣秀吉):朝鮮出兵
鎖国=江戸時代
開国=明治時代:ペリー来航、明治維新
鎖国=昭和初期:国際連盟脱退
日本は開国と鎖国を繰り返す事で、社会が変化し、成長してきた。鎖国メンタリティが強い時代は、国内的には平和で安定した時代が多く、新たな成長や拡大を求めるよりも「内向き」な成熟を求め、健康で幸福な生活を営む工夫が積み重ねられてきた。社会が成熟するにつれ、こうしたメンタリティが強くなるのはごく自然だ。
「成熟社会」という視点で日本を見ると、日本は世界の先頭を走っている。今更、発展途上の中国やインドと競争しても始まらない。今、必要なのは成長から成熟へのパラダイムシフトである。
著者 榊原 英資
1941年生まれ。財団法人インド経済研究所理事長、青山学院大学教授 大学卒業後、大蔵省入省。IMFエコノミスト、埼玉大学助教授、ハーバード大学客員准教授などを経て、大蔵省国際金融局長、財務官を務めた後、慶應義塾大学教授、早稲田大学教授を歴任。
エコノミスト 2012年 11/20号 [雑誌] |
TOPPOINT |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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序章 鎖国メンタリティと日本人 | p.8 | 5分 | |
第1章 「鎖国」と「開国」を繰り返す日本 | p.17 | 14分 | |
第2章 江戸時代ブーム―欧米化への反省 | p.43 | 21分 | |
第3章 「鎖国メンタリティ」と企業ガバナンスの弛緩 | p.81 | 21分 | |
第4章 平成日本を覆う社会の閉塞感 | p.119 | 15分 | |
第5章 今、また「鎖国」に向かう日本 | p.147 | 14分 | |
第6章 現在の動乱、ヨーロッパ危機の拡大 | p.173 | 14分 | |
第7章 資本主義の限界と、日本の未来 | p.199 | 17分 | |
第8章 成熟社会「日本」をいかにつくるのか | p.231 | 12分 | |
あとがき | p.254 | 1分 |