P&Gの元グローバル・マーケティング責任者が、優れた企業に共通する点は、優れたブランド理念を持っている事だと説く。著者の研究によれば、優れたブランドを構築した企業は、4倍の成長力を発揮するという。
どのようにして、優れたブランドを構築すれば良いのか。
P&Gで『パンパース』や『maxfactor』などのブランド再建に成功した著者の経験などが語られている。
■偉大なビジネスには偉大な理念がある
世界の5万以上のブランドを10年間追跡調査したデータによると、「人々の生活をよりよいものにする」事を目指す高次のブランド理念をすべての活動の核に据えている企業は、同業他社を大きく上回る業績をあげている。ブランド理念の面で特に優れている50のブランドの10年間における投資利益率の伸び率の平均は「S&P500」の構成企業の平均より、およそ4倍も高かった。
ビジネスを成長させるために必要なものは、「人々の生活をよりよいものにする」事を目標とし、ビジネスと人間の普遍的な性質に土台を置くビジネスの枠組みだ。複数の企業が競い合う市場で利益の獲得と事業の成長を牽引し、社員、顧客、取引相手、投資家に対してライバル企業との違いを示せる要因は、ブランドなのである。
■ビジネスを成長させる5つのルール
ブランド理念を中心にビジネスを成長させるためには、次の5つの活動を実践する。
①ブランド理念を発見する
あらゆる企業やブランドは、成長のエンジンとなりうる理念の原石を持っている。それを見つけ出したければ、そのビジネスの主たる存在目的、経営陣を含めて社員が抱く中核的な信念、そして顧客にとって大切な基本的価値(喜び、人との結びつき、探究心、誇り、社会への好影響)が結びつく部分を探せばいい。
・ブランド理念は、言葉ではっきり表現する
・組織内の誰かが、ブランド理念とそれに基づいた行動やシステムを社内に徹底する事に責任を持つ
・ブランド理念が社内で力を失っていないかどうかを頻繁に点検する
②企業文化を構築する
高度な信頼とチームワークを築く上では、「人々の生活をよりよいものとする」事を目指すブランド理念を打ち出す事を通じてチーム内で価値観を共有し、情緒的な絆をはぐくむ事ほど有効な方法はない。そのため、理念は、社内と社外の両方にはっきり示さなくてはならない。
③理念を伝達し、共有する
極めて急速に成長し続け、高い利益率を記録し、活発にイノベーションを行っている企業やブランドには、質の高いコミュニケーションを実践しているという共通点がある。有効なコミュニケーションなくして、有効な企業文化は築けない。
・コミュニケーションが成長の重要な原動力であると認識する
・コミュニケーションの行い方を考える際は、人と人との関係を参考にする
・コミュニケーションの質を測る際は、愛情ある人間関係の質を測る時と同じ基準を用いる
④理念に沿った顧客体験を提供する
ある企業やブランドが行うすべての活動は、ブランド理念に導かれた顧客体験という形で一つに集約される。ブランド体験とイノベーションは切っても切り離せない関係にある。理想的なブランド体験は絶えず変化し続ける。ビジネスリーダーは、既存の活動を高い水準で実行する事と、新しい活動の道を開くイノベーションを実現する事の両方を並行して推し進める必要がある。
⑤理念に照らしてビジネスと社員を評価する
ブランド理念に基づいて業績や社員の成績を評価し、マネジメントを行わなければ、そのビジネスは輝きを失い成長の軌道からはずれてしまう。成長を実現させ継続させるためには、次の4原則に沿って、ブランド理念の達成度を評価するといい。
・そのブランドの未来にとって最も重要な顧客や利害関係者との関係で、ブランド理念の実現状況を評価する
・ブランド理念を基準に、重要業績評価の指標を選ぶ
・ブランド理念の推進に貢献する事を全社員の職務計画の一部とするように義務づけ、社員の個人成績を評価する
・顧客や消費者と接する時間を測定し、そういう活動を奨励する
著者 ジム・ステンゲル
P&Gの元グローバル・マーケティング責任者 P&Gに25年間在籍し、パンパースやオレイなどのブランドを「消費者がボス」の視点から再生させ、ブランド王国P&Gの確固たる地位を築く。2001~2008年までグローバル・マーケティング責任者を務め、年間80億ドルの広告費を動かし、収益を倍増させた実績をもつ。2008年に退社後はジム・ステンゲル・カンパニーを設立。 コンサルティングを行なう傍ら、UCLAアンダーソン経営大学院の非常勤教授として、マネジメントを教えている。 2011年にはフォーチュン誌が選ぶ「ドリーム・マネジメント・チーム」の最高マーケティング責任者に選出。
TOPPOINT |
帯 経営コンサルタント トム・ピーターズ |
帯2 フェイスブックCOO シェリル・サンドバーグ |
tokuriki.com 徳力 基彦 |
週刊 東洋経済 2013年 3/30号 [雑誌] |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに 究極の成長エンジン | p.7 | 2分 | |
第1章 偉大なビジネスには偉大な理念がある | p.16 | 17分 | |
第2章 成長するビジネスの条件 | p.37 | 34分 | |
第3章 ブランド理念の木 | p.80 | 38分 | |
第4章 「ルール1」ブランド理念を発見する | p.130 | 23分 | |
第5章 ディスカバリーの「終わりのないビジネス」 | p.159 | 18分 | |
第6章 「ルール2」企業文化を構築する | p.182 | 36分 | |
第7章 パンパースはこうして世界を変えた | p.228 | 36分 | |
第8章 「ルール3」理念を伝達し、共有する | p.273 | 32分 | |
第9章 「ルール4」理念に沿った顧客体験を提供する | p.313 | 28分 | |
第10章 「ルール5」理念に照らしてビジネスと社員を評価する | p.348 | 21分 | |
第11章 ブランド理念を進化させ続ける | p.375 | 17分 | |
おわりに ビジネスのストーリーを変えるために | p.397 | 4分 |
第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい (翻訳) [Amazonへ] |