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2013/02/08更新

経済学に何ができるか - 文明社会の制度的枠組み (中公新書)

208分

10P

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日銀の独立性はなぜ必要か

金融緩和を推し進めて効果がないと思っていたら、ある時点で突如インフレーションが勃発する事もありうる。金融市場は一般の理解と予想を超えるような反応を示す事があるから専門家の判断が必要とされる。

しかし、その専門家の知識も完全ではない。さらに厄介な事は、どんな政策を選択しても必ず誰かの利害と衝突するという点だ。したがって専門性の尊重と民主的手続きのディレンマと緊張関係をどう緩和させるべきかという問題は避けられない。そこから日銀の「独立性」の議論が生まれる。だが、どこからの独立性なのか。金融政策には、物価安定だけでなく、成長、証券・為替市場など複数の目標があり、分配をめぐる争いのターゲットにさらされやすい。

中央銀行の行動に黄金律はない。だからこそ、専門家が選んだ手段や目標の結果により、自分の地位が左右されないような環境が必要なのである。戦時中の日銀が、政治からの独立性を失ってしまうという苦い経験を持った事を我々は記憶しておく必要がある。

インフレは国民から政府へ富を移転させる

成長する経済は、総供給が総需要の増大に追いつけず、インフレ圧力を受けるのは歴史の示す通りだ。20世紀に入り目立ち始めたハイパーインフレは、国家秩序を破壊するほどの激烈な力を持つ。それを阻止する対策には未だ定説はない。

デフレ的な気分が蔓延する現在の日本経済に、インフレの恐れが皆無かというと断言は難しい。金の価格はここ数年上昇気味、資産家の間では、インフレへの警戒から外貨預金や不動産購入への関心が高まっている。

一般にインフレは、政府が大量の紙幣を印刷して巨額の政府支出を調達し続ける事によって発生する。インフレは、国民から政府への「富の強制移転」であり、重い税金を課すのと同じ効果を生む。年金などの固定収入で生活する者や債権者に、巨大な損失を与え、富と所得の再配分効果は実に大きい。

幸福は経済だけでは測れない

経済的問題が解決されたからといって人間の幸福の問題が解決される訳ではない。しかし、所得や富がない場合よりもより自由な選択ができる事は確かであろう。

豊かさの指標として、GDPという概念が用いられるが、必ずしも経済的厚生を正確に測れる尺度ではない。例えば、主婦の家事労働はGDPに含まれない。このような事実を見ると、社会構造や慣習の違いでGDPの数字はかなり異なってくる。

近年、経済的厚生の測定を補完する試みが多く現れ出した背景には、戦後の先進工業国でGDPが飛躍的に増大したにもかかわらず、人々の幸福感がそれほど高まっていないという報告があるからだ。富んだ国の人々は貧しい国よりも「幸福だ」と思っているが、幸福と所得の関係はそれほど自明ではない。