全員に平等なチャンスなんてない
待っていれば平等なチャンスが与えられると思うのは、大きな間違い。特に新人は、自分の仕事を選ぶ事なんてできない。どの仕事も本質は変わらないし、どんな案件であっても簡単な仕事なんてない。大切な事は、そうして偶然与えられた仕事の中で、どうやって自分のバリューを発揮していけるかなんです。
チャンスを得たいなら、仕事の目標やキャリアプランは絶対にあった方がいい。僕は何もできない新人の内から「アートディレクターをやりたい、やらせて下さい!」と事あるごとに周囲に伝えていた。自分が何をしたいのか、わかって欲しいなら、常に自分からアピールしていかなければならない。
感性の解像度の高さを見ている
毎年インターンの学生を数名、受け入れている。面接の場で、必ずこう尋ねます。「あなたは、几帳面ですか?」。
几帳面という言葉には、神経質、ダイナミックな発想ができないといったマイナスイメージがあるようで、学生の多くは「そうでもありません」と答える。しかしそこで胸を張って「はい、几帳面です」と答える人が欲しい。僕の中では、それが一つの選考基準になっている。
僕たちが行う日々の業務は、0.1ミリの配置の違いや、数%の色味の差の検証である。自分で言い切れるほどに筋金入りの几帳面な人でなければ、とても続かない。ここでいう几帳面さは、そのままデザインに対する感性の解像度に通じると思っている。
デザインの目的が人に見てもらうものである以上、場の空気や人の気持ちを察し、繊細な配慮で形にしていく事の重要性は、常に意識しておいた方がいい。デザイナーに限った話ではなく、超一流と呼ばれる仕事をしている人たちは総じて場の空気や人の気持ちを察する能力が高く、相手を不快な気分にさせないものだと感じる。
マルセル・デュシャンに影響を受け続けている
デュシャンは、美術とは「作る」ものであると誰もが思っている時代に、作る行為そのものを否定した。見る人にアートとは何かを問いかけて、美術に対する価値観を、ひっくり返した。
クリエイティブとは、価値の転換そのものである。商品やブランドがそれまでと違って魅力的に見えるようになったり、それまでの常識やものの見方を一変させたり。
「価値の転換ができているかどうか」は常に、仕事の重要なものさしの一つである。一般常識や広告・デザインの常識の枠にいつの間にかはまりこんでいないか?常に疑って考えるようにしています。