アートディレクターの佐藤可士和さんへのインタビュー。
どのような考えで仕事に取り組んでいるのか?
アートディレクターとして大切な事は何か?
特にこれから社会に出る学生や自分の働き方を探している方向け。
仕事とは何かについてわかります。
■本気で取り組めばあらゆることから学べる
学生の内は、興味の対象を限定せずに、できるだけいろいろな事に目を向けた方がいい。なぜなら、思わぬ分野同士が結びついて、学びや気づきを与えてくれる事があるからです。
何かに真剣に取り組むと、やがて気づきの瞬間が訪れるんです。重要なのは、これと決めた事には、自分の時間やお金を惜しまず投資する事。投資額が大きいほど真剣に考えるし、決断力が養われる。自分にとって本当に大切な判断基準を知る機会にもなる。
但し、あれこれ手を出すと、自分の軸がブレるので注意した方がいい。あくまでクリエイティブを軸にしながら、少しずつ周りを増やしていく事。
■成熟した時代には日本的な強みが生きる
日本人の強みの一つは、すでにある製品を、改良しアップデートする能力の高さだと思っている。自動車しかり家電製品しかり、もとは海外で生まれた製品を「小型化」「多機能化」していく技術が非常に優れている。その理由は、国土の狭さが大きく関係している。利休の茶の湯や俳句のように、国土の狭さから、無駄をそぎ落とす事で本質に向き合う、独特の表現哲学が見出された。
0から1を生み出すアイデアはもちろん非常に価値が高い。しかし世界的に市場が成熟している今の状況では、すでに存在している1を10の価値にアップデートする事、つまり日本人が得意とする技術がより求められるし、それを意識する必要がある。
■失敗は成功と比較することで教訓になる
失敗には必ず意味がある。どんな人でも、新人の頃から成功だけしてきた人はいないはず。そうやって失敗した時や、自分の中でしっくりこなかった時に、自分のやり方をどう変えていくか。何が間違っていたのか、あるいは自分に足りなかったものは何なのかを客観的に見つめ、考え続ける事で、必ず大きな学びにつながっていく。
もしなかなか失敗の理由がわからない時は、成功した時の例と比較してみるといい。評価されたのはどこか。自分の意識に違いはあったかどうか。自分にとっての成功とは何か、失敗とは何かを明確にしておく事も、仕事を続ける上では大きなヒントになるはずです。
■良いものに触れ、考え続けて自分の中に軸をつくる
デザインに限らず、本物を見る目を養いたいのなら、本物を数多く見るしかない。素晴らしい建築デザインに触れたければ、その場所に行ってみる。足を使って、あるいは対価を支払って、自分のものにする事。
ただ情報を「知っている」のと、情報を「自分のものにする」のは全く違う。例えばインターネットは便利だが、気をつけないと、空っぽの情報で何かを知った気になってしまう危険性をはらんでいる。
何をもって良いデザインだと判断するかは、その時にその対象に求められている機能によって変わる。良いデザインというのは、表面的な造形の美しさではなく、目的に対して機能的か、そのものの本質をつかんでいるかどうかの方が重要だと考えている。
■対象の中に答えを見つける
僕は「対象の本質に迫る」ところからスタートします。ここで言う対象とは、デザインを依頼するクライアントやその商品、サービスなどの事。問題解決のカギは、対象自身の中にある。つまり対象について考え抜けば、必ず解決策が見えてくる事になります。
では、どうやって対象について考えを詰めていくか?僕の場合は、徹底してそぎ落としていく方法をとります。そうすると、最後にシンプルな本質だけが残る。その本質こそが、問題への答えとなる。
著者 佐藤 可士和
1965年生まれ。アートディレクター・クリエイティブディレクター 博報堂を経てサムライ設立。明治学院大学、多摩美術大学客員教授、慶應義塾大学特別招聘教授。 国立新美術館のシンボルマークとサイン計画、ユニクロ、楽天グループ、セブン-イレブン、グローブライト、今治タオルのクリエイティブディレクション、NTTドコモ「FOMA N702iD / N703iD」のプロダクトデザイン、明治学院大学のブランディングプロジェクト、「カップヌードルミュージアム」や「ふじようちえん」のトータルプロデュース等を手がける。 ADC賞、毎日デザイン賞ほか受賞多数。
帯 インテリアデザイナー 片山 正道 |
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
週刊 東洋経済 2013年 2/2号 [雑誌] |
週刊 ダイヤモンド 2013年 2/9号 [雑誌] 紀伊國屋書店和書仕入本部係長 水上 紗央里 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.2 | 1分 | |
第1章 世の中をどんなふうに見ていますか? | p.9 | 9分 | |
第2章 やりたいことを仕事にするには? | p.35 | 10分 | |
第3章 こんなとき、どう考えますか? | p.63 | 9分 | |
第4章 いい仕事を続けていくために大切なことは? | p.89 | 10分 | |
第5章 佐藤可士和インタビュー 社会をキャンバスに、デザインという絵の具で表現する | p.117 | 8分 | |
おわりに | p.140 | 1分 |