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2013/01/17更新

知の逆転 (NHK出版新書 395)

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現代最高の知性6人のインタビュー

文明、遺伝子、言語学などで、学問の常識を逆転させた世界最高の学者6人に対するインタビューをまとめたもの。

文明、宗教、資本主義、教育、人工知能、脳科学、インターネットなど、様々なテーマで人類の将来を語っている。

超短要約

■資本主義と民主主義の限界:ノーム・チョムスキー
・市場原理だけでは必ず破綻する
アメリカは資本主義の国という事になっているが、人々が使うほとんど全てのものは、経済の公共部門から出てきたもの、つまり元々は税金によって、政府のプロジェクトとして開発されたものである。

唯一市場原理だけで動いているのが、金融部門。だから何度も破綻する。市場原理だけでは破綻は避けられない。金融部門はほぼ10年ごとに大きな危機に見舞われている。

アメリカが19世紀に発展を遂げたのは、より優れた英国製品の流入を制御すべく、世界一高い保護関税をかけていたから。日本も同じで、先進国はみなこのようにして発展した。資本主義の要素はあるが、実際のところ民間ビジネスは強い政府によって保護される事を望んでいる。

市場世界では、自分達の利益を最短時間で最大にするという任務を負っているので、外部性(システム全体の危機)を考慮しない。これが市場というものの性質である。

・民主主義の限界
民主主義はそれ自体に価値があるが、実際には、なんらかの権利を求める場合、人々はその権利獲得のために大変な努力を払う必要がある。単に与えられた権利の場合、ありがたみがないので、結局十分に使わずじまいになってしまう。

西欧社会における民主主義はこれまでほぼポジティブであった。問題は民主主義の限界である。アメリカは世界中で最も自由な国のはずだが、国内で力の不均衡がある。情報システム、メディア、広告などが、ほんの一部の手に集中している。自由国家では、国内の支配がごくわずかの巨大なパワープレーヤーに集中してしまいがちになる。しかもアメリカでは1/3が聖書に書いてある事を文字通り信じている。この2つが一緒になると、大変危険な事になる。

・インターネットは新しい民主主義を生み出すか
インターネットは素晴らしい調査研究の道具になるし、広く様々な種類の道具へのアクセスを可能にしてくれる。しかし、情報にアクセスする事自体は、あまり役に立たない。何を探すべきか知っている必要がある。そのためには、理解あるいは解釈の枠組みというものをしっかり持っていなければならない。これを個人で獲得するのは大変である。機能している教育制度や組織が必要だし、他の人達との交流が必要になる。視点というものが形作られ発展していくためには、構造を持った社会が必要になる。

現代は大変細分化された社会で、組合も政党も影が薄い。そういう社会では、インターネットはカルトを生む土壌になる。インターネットはコミュニティを基本とする民主主義の土台になる事は可能だが、ほとんどの人々にとってインターネットは個人で使う道具の域を出ない。

著者 ジャレド・ダイアモンド

1937年生まれ。生理学者、進化生物学者、生物地理学者 カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授。アメリカ国家科学賞、タイラー賞、ピュリッツァー賞、コスモス国際賞など受賞多数。長年にわたってニューギニアでフィールドワークを続けている。そこでニューギニアの人々との交流から人類の発展について興味を持ち、その研究の成果の一部が『銃・病原菌・鉄』として結実。 近著として、マヤ文明など、文明が消滅した原因を考察し、未来への警鐘を鳴らした『文明崩壊』がある。

著者 ノーム・チョムスキー

1928年生まれ。マサチューセッツ工科大学教授 生成文法理論で言語学に革命を起こして一時代を築く一方、ヴェトナム戦争以来、アメリカの対外政策を厳しく批判しつづけてきた。

著者 オリバー・サックス

1933年生まれ。コロンビア大学医科大学院教授 オックスフォード大学を卒業後、渡米。脳神経科医として診療をおこなうかたわら、精力的に作家活動を展開し、優れた医学エッセイを数多く発表する。現在、コロンビア大学教授をつとめる。 代表作に『レナードの朝』『火星の人類学者』など。

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章の構成 / 読書指針

章名 開始 目安 重要度
まえがき p.3 4分
第1章 文明の崩壊 (ジャレド・ダイアモンド) p.19 29分
第2章 帝国主義の終わり (ノーム・チョムスキー) p.65 40分
第3章 柔らかな脳 (オリバー・サックス) p.127 27分
第4章 なぜ福島にロボットを送れなかったか (マービン・ミンスキー) p.169 19分
第5章 サイバー戦線異状あり (トム・レイトン) p.199 37分
第6章 人間はロジックより感情に支配される (ジェームズ・ワトソン) p.257 26分
あとがき p.297 3分

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