法学者である著者が、人間の選択は様々な制限を受けており、選択した個人に全ての責任を負わせる「自己責任」の考え方には、配慮が必要だという事を説いている。
■選択の神話
ほとんどの人は、「自分の生活は自分でコントロールしている」と考える。つまり、自分は運命の主人で、課された選択は自分で決めているという認識だ。政府が私たちの持つ選択権に何らかの制限(妊娠中絶、健康保険、銃の所持など)をかけようとすると、その制限と戦おうとする。しかし、選択の自由に対する執着には、大きな問題がある。
①そもそも、どの選択が有効なのか判断が容易ではない
②選択の自由に対する制限は、ほとんど政府に由来するものではない
政治や法のレトリックでは、選択の自由、自立、自己責任が賞賛され、神聖化される。その一方で、私たちは、いったいどこに真の選択の自由があるのか、また現実には選択の自由に対する制限は広く浸透しているという、大きな問題に直面している。
ほとんどの人は、「自分の生活は自分でコントロールしている」と考える。しかし、現実には選択の自由に対する制限が広く浸透している。人間は脳の機能のために制限され、文化によって盲目にされ、権力にそそのかされ、市場に操作される。この事実に無知のままでいると、それだけそれらの影響は強力で避けがたく、かつ目に見えないものになる。
私たちが考えているほど、人には選択の余地がない場合が多い。通常、ある人が何かを選択する場合、その人は、それにともなう責任と、道徳的な要請を受け入れたとみなされる。しかし、そうでないケースも存在する。
そのため、自分のまわりにいる人々がした選択について評価するには、適切な判断をする習慣を身につけておく必要がある。相手の状況に耳を傾け、その詳細に注意を払い、知的共感能力(他者が直面している状況を理解する能力)を行使するよう求められる。そして、私たちのまわりの人々が何かを決める時は、脳の機能、文化、権力、自由市場の影響を受けているという事を理解しておく必要がある。
ボストンカレッジ・ロースクール教授 ディヴィッド・スーター最高裁判事の法務書記を務めた経歴をもつ。会社法に関する著書もあるが、性的マイノリティの権利運動に携わったり、FAIR(大学と研究機関の権利に関するフォーラム)という団体を創設し、ドナルド・ラムズフェルド元国防長官らを相手に訴訟を起こしたりするなど、幅広く活動している 。
帯 コロンビア大ビジネススクール教授 シーナ・アイエンガー |
週刊 ダイヤモンド 2013年 1/12号 [雑誌] 紀伊國屋書店新宿本店第2課係長 水上 紗央里 |
週刊 東洋経済 2013年 3/16号 [雑誌] 東洋英和女学院大学教授 中岡 望 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.8 | 4分 | |
第1章 選択、選択、選択 | p.17 | 22分 | |
第2章 選択への愛 | p.47 | 22分 | |
第3章 脳 | p.79 | 26分 | |
第4章 文化 | p.114 | 30分 | |
第5章 権力 | p.154 | 22分 | |
第6章 自由市場 | p.184 | 24分 | |
第7章 「自己責任」の落とし穴 | p.219 | 19分 | |
第8章 審判も判事もまちがえる | p.245 | 23分 | |
第9章 いかに選択するか | p.276 | 24分 |
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