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マクドナルドのしくみを取り入れる

「大量、高品質、手頃なコスト」は、アラヴィンドの運営モデルのモットーだ。価格を低く抑えても収益をあげられる。ドクターVはマクドナルドの標準化と商品の知名度、アクセスのしやすさ、そして規模に注目した。「西洋の下位中流層の多くがファストフードを買えるように、途上国の人にも手が届く白内障手術を提供するしくみをつくれるはずだ」と、ドクターVは1980年代後半に語っている。

ドクターVは流れ作業方式を導入した。アラヴィンドでは、受付から病院を出るまですべての流れが患者中心で、細かく分かれたプロセスのほとんどを専門職の助手が受け持つ。助手には看護士、カウンセラー、屈折検査技師など10以上の職種があり、それぞれが明確に定義された仕事だけを担当する。その結果、執刀医の技術と時間を最大限に活用できるシステムが生まれ、アラヴィンドの医師はインドの全国平均の約5倍のパフォーマンスを実現できるようになった。

アラヴィンドのやり方は、患者の利益にかなっている。合理化されたワークフローは効率性を高め、待ち時間を減らす。担当者が同じ仕事を繰り返すことによって能力が向上し、診察や手術の結果が向上する。医師の専門知識を必要としないプロセスに熟練の助手を雇えば、患者への配慮が手厚くなるだけでなく、コストが減り治療費が安くなる。

非利用者を重視する

インドは、白内障の発症率が先進諸国よりも高い。失明は、極貧の人々から生きる意志と手段を奪いかねない。アラヴィンドを創立してまもなく、ドクターVはわずかな収益をつぎこんで、地方に暮らす貧しい人々に無料で白内障の手術を行った。しかし当初、多くの人は病院に来なかった。地方の患者は交通費や食費などの生活費のほか、患者本人と付き添いの家族が治療中に稼げない賃金を考えて、手術を躊躇する事がわかった。

こちらが無料で提供するものを相手が必要としているというだけでは、相手は応じない。アラヴィンドは、キャンプで無料の検査を行うだけでなく、病院までの交通費を肩代わりして、手術はもちろん入院費、食費、薬代、経過観察の往診もすべて無料にした。

これによって、キャンプの後に手術を受ける人が、約5%から80%に急増した。各地の村から満員のバスでやってきた患者が、次々に視力をとり戻す。無料で治療を受けた最も貧しい村の人々の多くが、最も熱心にその素晴らしさを広める。ドクターVは、眼科治療の「必要性」を能動的な「需要」に変えた。

患者の数が多い事は、アラヴィンドのモデルで様々な役割を果たしている。医療サービスの標準化、コスト効率の向上、手術の訓練と技術の熟練にも数が貢献する。