縮小する男女の給与格差
民間企業に勤める男性の給与は、1997年にピークの577万円を迎えるまで伸び続けた。それ以降は今日に至るまで下げ止まる事なく推移している。一方、女性の給与は1998年にピークの280万円に達する。以降、2000年までほぼ横ばいで推移し、2001年になって下降し始める。
男性の場合、ピーク時の577万円から500万円へ、77万円も給与が減っている。対して、女性は280万円から263万円へと、17万円の減少にとどまっている。男女の給与の減り方に大きな差が出ている要因に次のことが考えられる。
①男性の非正規雇用者の増加
②男性の正規雇用者の賃金低下
③女性の正規雇用者の給与増加
男性不況が格差を広げ、少子化に拍車をかける
男女間の給与の差がなくなる事自体は、女性にとって喜ばしい。だが、ここに男性不況がもたらす社会の歪みが隠れている。
①世帯間の所得格差の拡大
1998年以降、世帯間の所得格差は広がるトレンドにある。この原因は、男女の給与格差の縮小にある。男女間の給与の差がなくなると「高所得女性」が現れる。高額な給与をもらっていた男性が、高所得女性と結婚する事でより一層、家計の所得を増やせる事になる。今では高額な給与をもらう男女がカップルになるケースは珍しい事ではない。
②晩婚化・未婚化
男性の場合、20・30代共に、年収が多くなるほど既婚率が高くなる傾向がある。一方、年収300万円未満では、20・30代共に既婚率は9%前後と極めて低い水準にある。2010年の全男性納税者の23.4%が年収300万円未満。年収300万円に届かない低所得男性は増加の一途であり、「結婚していない」男性が増えている。婚姻率が下がれば当然、少子化が今以上に進行する。
減る「男の消費」、増える「女の消費」
男性の給料が減ると、男性のお小遣いも少なくなる。2011年には36500円と20年前の半分程度の水準にまで落ち込んでいる。そのため、男性が主なユーザーである嗜好品は、ここ数年一様に売上を減らしている。
・たばこ:2011年の販売数量は1996年の57%
・酒:2010年の消費量は1996年から15%減
たばこ税と酒税の合計は1兆円もの税収が減っている。男性不況で売れなくなったのは、嗜好品だけでなく、より経済全体への影響が大きい自動車や家電などの耐久消費財も同様である。
一方、女性の嗜好品の代表スイーツの市場は、2004年からほとんど変化しておらず、ほぼ前年並みを維持している。しかし、女性が主導する市場の商品は、車や家電などの耐久消費財に比べて、経済波及効果が小さい。女性の収入が増えても、経済の活性化は簡単に進まない。