晩婚化・少子化、格差拡大、草食系男子、女子会ブーム。昨今の社会の動きの裏には、労働市場における男性の価値の低下があると説く。
■「男性不況」とは何か?
「男性不況」とは、男性の失業率が女性を上回り、かつその差が拡大する不況下の状況を表す。今、日本では、男性不況が着々と拡大し、男性失業率が女性失業率を上回る事態に陥っている。
日本では、1997年が労働市場のピークで、それ以降縮小の傾向が続いている。2011年までの14年間で313万人も就業者が減ったが、実にその91%にあたる、285万人が男性就業者である。
就業者の減少で特に著しいのが製造業と建設業で、2002年と比較すると、それぞれ205万人、145万人少なくなっている。当時の男性就業者の4割近くがこの2業種に集中していたので、製造業と建設業の就業者減が、男性就業者が減った最大の要因である事は間違いない。
このように雇用者の減少傾向が続く一方で、医療・福祉だけがダントツで雇用者を増やしている。その数は、2002〜2011年の9年間で178万人増となっている。そして、この内、約8割を女性が占めている。
つまり、製造業や建設業といった男性向きの雇用が減り、医療・福祉といった女性向きの雇用が増えているのが、男性不況だといえる。
かつては男性の方が低かった失業率もここ数十年間で男女が逆転し、2010年にはその差が過去最大の0.8%にまで広がった。「男性不況」とは、男性の失業率が女性を上回り、かつその差が拡大する不況下の状況を表す。
製造業や建設業といった男性向きの雇用が減り、医療・福祉といった女性向きの雇用が増える。それと並行して、かつては男性向きと考えられていたホワイトカラーの門戸が女性にも開かれる。その結果として「女性高・男性安」になった。
今、日本では、男性不況が着々と拡大し、世帯間の所得格差の拡大、晩婚化・少子化といった社会問題が生じている。
著者 永濱利廣
1971年生まれ。第一生命経済研究所主席エコノミスト 1995年第一生命保険入社。1998年4月より日本経済研究センター出向。2000年4月より第一生命経済研究所経済調査部副主任研究員、2004年4月より同主任エコノミストを経て、2008年4月より現職。 景気循環学会幹事、国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、一橋大学・跡見学園女子大学非常勤講師、総務省家計調査等改善検討会委員等
TOPPOINT |
日本経済新聞 福井県立大学地域経済研究所所長 中沢 孝夫 |
日本経済新聞 2回目 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.3 | 3分 | |
第1章 男性不況とは何か? | p.15 | 23分 | |
第2章 男性不況で変わる男女の立ち位置 | p.57 | 21分 | |
第3章 男性不況が格差を広げ、少子化へのスパイラルに拍車をかける | p.95 | 27分 | |
第4章 男性不況が変える日本の姿――消費・家庭・雇用 | p.144 | 21分 | |
第5章 男性不況に勝つための戦略 | p.182 | 28分 | |
おわりに | p.233 | 2分 |