これからは官に頼らないコミュニティが必要だ。住民自らが参加し、自分たちの街をつくっていく。こうしたプロセスをデザインする著者が、その必要性と手法を紹介している。
■「活動人口」という考え方
日本各地で人口が減少している。「定住人口が減るなら交流人口を増やそう」という話になる事が多い。つまり、お客さん人口を増やそうという訳だ。ところが、お客さんがたくさん街に入ってくると、ゴミを捨てて帰る人たちが増え、それが街の未来像としていいものなのかがわからなくなる。
むしろ「活動人口」を増やすという手もあるのではないか。定住人口が減っても、市民活動に関わる人たちが増えていれば、まちは豊かになるのではないだろうか。活動人口が増えれば人のつながりが増える事になり、孤立化していた市民がひとまとまりのコミュニティを形成する事になる。
隣人と協同して掃除すらしないから、近所に誰が住んでいるのかもわからない状態になる。その結果、引きこもりや孤立死、無縁社会という事が問題になる。
■コミュニティデザインの方法
コミュニティデザインは、コミュニティデザイナー、参加者と2つの変数が絡む作業のため、教科書化する事は難しい。但し、その方法にはいくつかのパターンのようなものはある。そのパターンを軸にしながら、「今回はこれを少し変形させよう」とか「今回はこの順序を逆にしよう」と考えながら戦略を練る。大きく分けて4段階の作業をしている事が多い。
①ヒアリング
ヒアリングの内容は3点。「どんな活動をしているのか」「その活動で困っていることは何か」「他に興味深い活動をしている人がいたら紹介してくれないか」。
ヒアリング時期には、付随して、地域の人口、高齢化率、歴史、特産品、商業、観光資源などを調べる。インタビューは、相手から情報を引き出すだけが目的ではなく、自分がどんな事を考えている人間なのか相手に知ってもらう事も大切である。そして、最終目的は相手と友達になること。個人的に電話して「ワークショップが始まりますから絶対に来て下さいよ」と誘える関係になっておけるかが大切だ。
②ワークショップ
地域の情報を調べ、人の話を聞くうちに、仮説的なプロジェクトがいくつか頭の中に思い浮かんだら、それについて話し合う場をデザインする段階になる。但し、自分が思いついた事をそのまま参加者に伝えないこと。地元で生活する人たち自身が発案し、それを組み立て、自分たちができる範囲でプロジェクトを立ち上げる。立ち上げたプロジェクトに磨き上げ、仲間も増やしていく。こうしたプロセスこそが大切である。
参加者の多くが「これは俺のアイデアだ」と思えるようなプロジェクトを提示できるかどうか。そのためには、多くの事例を知っておく事と、多くの意見を整理しながら把握する事、タイミングを逃さずにプロジェクトを提案する事が大切である。
③チームビルディング
アイデアが出揃った段階で、「誰がどのプロジェクトを担当するのか」を決める。自分たちで出したアイデアを自分たちで実行していくという気運を高め、具体的に何から始めるのか話し合ってもらう事が大切である。そのためには、まずチームをつくる。それぞれが興味のあるプロジェクトに参加できるように自由に決めてもらえばいい。
④活動支援
最初は自分たちだけでできない事が多いため、活動のための準備や役割分担などについて相談に乗ったり手助けしたりする。場合によっては、行政などの経済的な支援を受けられるような体制づくりを支援したりもする。
著者 山崎 亮
1973年生まれ。株式会社studio‐L代表 京都造形芸術大学教授 コミュニティデザイナー。人と人とのつながりを基本に、地域の課題を地域に住む人たちが解決し、一人ひとりが豊かに生きるためのコミュニティデザインを実践。まちづくりのワークショップ、市民参加型のパークマネジメントなど、50以上のプロジェクトに取り組んでいる。
日本経済新聞 千葉大学法経学部総合政策学科教授 広井 良典 |
エコノミスト 2012年 12/11号 [雑誌] 流通科学大学学長 石井 淳蔵 |
THE 21 (ざ・にじゅういち) 2013年 07月号 [雑誌] 消費社会研究家 三浦 展 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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第1章 なぜいま「コミュニティ」なのか | p.3 | 40分 | |
第2章 つながりのデザイン | p.67 | 40分 | |
第3章 人が変わる、地域が変わる | p.131 | 29分 | |
第4章 コミュニティデザインの方法 | p.177 | 45分 | |
あとがき | p.250 | 3分 |
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