ハウステンボス再生へ
再生のポイントは2点あるように感じられた。
①今までの「オランダの街並みを忠実に再現し、オランダに行かずとも雰囲気が味わえる」というコンセプトを超える価値を創り出さねばならないこと。
②収支の改善はもちろん、これまで背負ってきた金銭面での問題を取り除くこと。
そこで、ハウステンボスが抱えてきた負債を整理してもらえるか、金融機関と交渉し、さらに九州財界からの出資で借金をゼロにした。
まずい食べ物には1円も払いたくない
ハウステンボスの場内を回ると、至るところに問題があった。まず、採算が取れずに閉鎖しているエリアがあり、まさにゴーストタウンさながら。いかにも不景気で、アミューズメントパークなのに雰囲気が暗い。入場者数はますます減っていき、テナントも撤退する。するとますます維持が難しくなるという悪循環にはまってしまった。
そこで、試しに3ヶ月、17時以降の入場料を無料にしてみた。しかし、全く入場者は増えなかった。航空券は、値段を下げれば下げるほど喜ばれる。しかし、テーマパークが提供している価値は、そういうものではなかった。お金をかけ、ハウステンボスに来て頂く事の価値を作らねばならないのだ。
今度は、700万球のイルミネーションを用意して「光の王国」を作り、ショーを用意するなど、アトラクションを充実させ、値段を引き上げた。あの手この手でお客様が楽しめる仕掛けを投入し、値上げをするたびにお客様の数は増えていった。
人々の心持ちを立て直す
新しい価値の付加と並んで重要なポイントは、経費の徹底的な見直しだった。花の仕入れ価格の見直し、不要な部署の閉鎖を行い、従業員には1.2倍速く動くことを求めた。さらに以下の新しい取り組みを行った。
・面積の1/3を入場料無料のエリアとし、リソースの選択と集中を行った
・無料エリアを新しい試みの実験場所とした(ONE PIECEのアトラクション等)
・無料エリアを観光ビジネス都市として、ベンチャー企業に開放・誘致した
施設面や運用面の改革、コストカットを進めたが、最大の問題は、従業員の気持ちだった。社員たちは「負け戦」ばかりでモチベーションが下がり切っていた。従業員から負け癖を抜くには、とにかく直接話すしかない。そこで、次の3点にポイントを絞った。
①嘘でもいいから明るく元気に
②掃除をしよう
③増収経費削減で黒字化したらボーナスを出す
経営者にできる事は、従業員に教育という形でしっかり投資を継続すること、そして熱い思いを機会があるたびに繰り返すことではないか。
皆がハッピーでなければ、ビジネスは成り立たない。お客様も、従業員も、取引先も、会社や株主も、そして地域も良くなっていくバランスを探ること。それこそが持続可能な企業の姿だ。