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2012/12/17更新

世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア

303分

10P

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最先端の経営学の知識が学べます

世界のビジネス研究の最新トピック、知識がまとめられた1冊。
海外の経営学者は、今どのような研究を行っているのか、幅広い経営学の研究内容がわかります。


■経営学についての3つの勘違い
①アメリカの経営学者はドラッカーを読まない
アメリカのビジネススクールの教授の大半は、ドラッカーの本を「学問としての経営学の本」とは認識していないし、研究においてもドラッカーの影響は受けていない。経営学者のするべき仕事とは「企業経営を科学的な方法で分析し、その結果得られた成果を、教育を通じて社会に還元していく」ことである。ドラッカーの言葉は「名言ではあっても、科学ではない」から興味を持たれない。

②ハーバード・ビジネス・レビュー(HBR)は学術誌ではない
HBRに掲載される論文には、学者が紹介する経営分析の新しいツールや、最新の企業戦略などは語られているが、それらの科学的な分析の仔細が報告されている訳ではない。経営学者にとって、HBRに論文を載せるという事は、重要な業績にはならない事が多い。HBRとは、研究を積み重ねる経営学者が、それらの成果を経営の実践に応用してもらう事を目的としたものである。

③よい授業をしても出世などできない
経営学者たちにとって教育(ティーチング)は研究と比べればさほど重要ではない。教育は最低条件であって、出世に決定的に重要なのは、研究業績である。

超短要約

■組織の記憶力を高めるにはどうすれば良いのか
組織が過去の経験から学習する事は、多くの実証研究で確認されている。そのメカニズムを理解すれば、組織の効率を高め、成長させる事ができる。

・学習のスピードには組織や産業で違いがある。
・組織の記憶力に重要なことは、組織全体が何を覚えているかではなく、組織の各メンバーが他メンバーの「誰が何を知っているか」を知っておく事。これをトランザクティブ・メモリーと言う。
・トランザクティブ・メモリーが効果的に働くためには、組織のメンバーそれぞれが専門性を深めていること、そして相手が何を知っているかを正しく把握している事が重要である。
・互いを知る事で自然に形成されるトランザクティブ・メモリーを強制的にゆがめると、むしろ組織の記憶の効率は落ちる可能性がある。

■経営学の一大潮流「ネットワーク理論」
世界の経営学では「ソーシャル」は、一大潮流の研究テーマである。そしてこれまでの研究で、ソーシャルな関係が個人や企業の成功に大きな影響を及ぼしている事が、次々に明らかになっている。

経営学でソーシャルを分析する枠組みは、3つあり、それぞれ以下の事がわかっている。

①ソーシャル・キャピタル
ソーシャル・キャピタルとは「人が人が関わり合う事で生まれる便益」と考えればよい。人と人が関係性を持ち、その関係性が人の行動に影響を与える時、ソーシャル・キャピタルは人や組織にメリットをもたらす事がある。

②関係性のソーシャル・ネットワーク
ソーシャル・キャピタルは、人と人の深い関係性がメリットをもたらす。しかし、必ずしも人のつながりは、深くあるべきではない。実は「ただの知り合い」で構成される弱い結びつきのネットワークの方が、多様な情報を効率的に伝播させ、知識を手に入れやすい。ソーシャルな関係の有効性は、条件によって大きく異なる。深く情報を得ようとするならば強い結びつきが効果的、逆に多様な情報を集めたい時には弱い結びつきが効果的である。

③構造的なソーシャル・ネットワーク
ストラクチュアル・ホール(ソーシャルの構造的な隙間)を多く持つひとは、ネットワーク上に流れる情報や知識をコントロールする事ができるようになるため、それを利用して得をする事ができる。

著者 入山 章栄

早稲田大学ビジネススクール准教授 三菱総合研究所で主に自動車メーカー・国内外政府機関への調査・コンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。 同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。2013年から現職。専門は経営戦略論および国際経営論。

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章の構成 / 読書指針

章名 開始 目安 重要度
この本を手にされた方へ p.1 5分
第1章 経営学についての三つの勘違い p.12 11分
第2章 経営学は居酒屋トークと何が違うのか p.28 8分
第3章 なぜ経営学には教科書がないのか p.40 13分
第4章 ポーターの戦略だけでは、もう通用しない p.60 16分
第5章 組織の記憶力を高めるにはどうすればよいのか p.83 14分
第6章 「見せかけの経営効果」にだまされないためには p.104 14分
第7章 イノベーションに求められる「両利きの経営」とは p.125 17分
第8章 経営学の三つの「ソーシャル」とは何か(1) p.149 12分
第9章 経営学の三つの「ソーシャル」とは何か(2) p.167 13分
第10章 日本人は本当に集団主義なのか、それはビジネスにはプラスなのか p.186 12分
第11章 アントレプレナーシップ活動が国際化しつつあるのはなぜか p.203 15分
第12章 不確実性の時代に事業計画はどう立てるべきか p.225 17分
第13章 なぜ経営者は買収額を払い過ぎてしまうのか p.249 12分
第14章 事業会社のベンチャー投資に求められることは何か p.266 15分
第15章 リソース・ベースト・ビューは経営理論といえるのか p.286 14分
第16章 経営学は本当に役に立つのか p.308 13分
第17章 それでも経営学は進化しつづける p.327 10分
この本を読んでくださった方へ p.342 6分

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良い本です
2013-09-16