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2012/12/19更新

わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か (講談社現代新書)

174分

6P

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内向きの日本の理由

「ダブルバインド」は、統合失調症の原因の一つとも考えられている。このような環境に長く置かれると、多くの人が「操られ感」や「自分が自分でない感覚」等を感じると言う。その結果として引きこもり等が起きやすくなる。

社会全体がダブルバインドの状態にある今の日本で、ニートや引きこもりが増えるのは当然であり、日本社会全体が内向きになっているとされる理由も、ここにある。

対話する力を身につけよ

「会話」と「対話」は次のように定義され、2つの言葉は区別される。

・会話:価値観や生活習慣なども近い親しい者同士のおしゃべり
・対話:あまり親しくない人同士の価値観や情報の交換。

日本社会には「対話」という概念が希薄である。一般に、日本社会は、ほぼ等質の価値観や生活習慣を持った者同士の集合体(=ムラ社会)を基本として構成され、その中で独自の文化を培ってきた。

一方、ヨーロッパは、異なる宗教や価値観が、陸続きに隣り合わせているために、自分が何を愛し、どんな能力を持って社会に貢献できるかを、きちんと他者に言葉で説明できなければ無能の烙印を押されるような社会を形成してきた。

両者は、どちらが優れているという事はない。例えば、「柿くへば 鐘が鳴るなり 法隆寺」という句を聞いただけで、多くの人が夕暮れの斑鳩の里の風景を思い浮かべる事ができる事は、大変な能力である。我々は、組織だって、一丸となって何かを行う時に、まさに阿吽の呼吸で大きな力を発揮する。

しかし、こうした「察し合う」コミュニケーションは世界において少数派である事を、私たちは認識すべきである。そして、国際社会を生きていかなければならない子供たちには、他者に対して言葉で説明する能力を身に付けさせてあげたいと思う。

だが「説明する」という事は虚しいことでもある。「柿くへば 鐘が鳴るなり 法隆寺」を説明しなければならないのだ。柿を食べていたら偶然鐘が鳴ったのか。鐘が鳴ったから、柿を食いたくなったのか。法隆寺はなんの象徴か。こんな身も蓋もない説明を、他者に向かって繰り返していかなければならない。

コミュニケーションのダブルバインドを乗り越えるというのは、この虚しさに耐えるということだ。異なる価値観と出くわした時、粘り強く共有できる部分を見つけ出していくことは、単に教え込めばいいという事ではなく、対話を繰り返すことで出会える喜びも、伝えていかねばならない。意見が変わることには、新しい発見や出会いの喜びさえある。その小さな喜びの体験を少しずつ味わわせていく以外に、対話の基礎体力を身に付ける近道はない。