マッキンゼーの採用マネジャーを12年務めた著者が、マッキンゼーで求められるスキルを解説。どのような基準で人材採用しているのか、マッキンゼーではどのようなトレーニングが行われるのかといった事が紹介されている。
マッキンゼーに入りたい人は一読しておくべき内容です。
■リーダーシップが最も大切
マッキンゼーが求めている人材を一言で表現すれば「将来、グローバルリーダーとして活躍できる人」である。コンサルタントと言えば問題解決スキルと思われるかもしれないが、リーダーシップこそコンサルタントにとって最も重要なスキルである。
今の時代、「これが正しい答えです」と書かれた紙に多額のフィーを払う企業は存在しない。顧客の企業価値向上を実現するためには、解決策を検討する段階から組織の中に入り込んで現場スタッフの信頼を獲得し、最終的な提案内容についても、様々な部署と調整しながら、組織のルーチンに落とし込んでいく必要がある。そして、既存のやり方を変えるには、強力なリーダーシップが必要とされる。現実に問題を解決するのは、問題解決スキルではなく、リーダーシップである。
■誤解される採用基準
外資系コンサルティング会社が求める人材のイメージは、正確に理解されていない。
①ケース面接に関する誤解
ケース問題に答えが出せたかどうかは採用判断にほぼ関係ない。何よりも面接担当者が知りたいには「その候補者がどれほど考えることが好きか」、そして「どんな考え方をする人なのか」という点である。考えることが好きな人なら、どんな課題についても熱心に考えようとする。覚えてきたケース問題の解放を頭の中から取り出しながら、「これで合っていますか?」とでも聞きたげな候補者は、考える適性があるようには見えない。
②「地頭信仰」が招く誤解
地頭信仰は「頭さえ良ければコンサルティングファームに入ることができる」という誤解を生む。コンサルティング業務の仕事は、次の3つのプロセスに分かれる。
・経営課題の相談を受ける
・問題の解決方法を見つける
・問題を解決する
このうち地頭が関係するのは「問題の解決方法を見つける」ところだけ。「問題の解を見つけられること」と「問題が解決できること」は全く次元が異なる。その実施のためには、組織の仲間に痛みを強いたり、外部企業との微妙な提携交渉をうまく乗り切ったり、様々な支援が必要である。それらの工程を統括し、着実に前進する力は地頭の良さとは無関係である。
③分析が得意な人を求めているという誤解
コンサルタントが問題を解決するためには「現状把握や分析」というプロセスに加えて「では、どうすれば良いのか」という処方箋を書く後半部分が必要である。何が悪いのか、ということだけがわかっても、解決策にならない。
マッキンゼーでは、処方箋を書くための、構築型の能力がある人が求められる。構築型の能力とは「独自性があり、実現した時のインパクトが極めて大きな仮説を立てる能力」であり、「ゼロから、新しい提案の全体像を描く構想力や設計力」である。
④優等生を求めているという誤解
優等生とは、数的処理能力もコミュニケーション能力も洞察力も文章力も全部一定レベル以上のバランス型の人材のことである。マッキンゼーでは、バランスが崩れていても良いので、何かの点において突出して高い能力を持っている人が高く評価される。危機の時、ここぞという時に使える自分の勝負球や自分独自の勝ちパターンを持っていれば、それで難局を乗り切れる。
⑤優秀な日本人を求めているという誤解
マッキンゼーの採用基準は、大枠ではグローバルに統一されている。その条件は次の通り。
・リーダーシップがあること
・地頭が良いこと
・英語ができること
・日本語(現地語)ができること
今やこの4条件を満たす人の絶対数が、日本人より中国人の方に多いと懸念される状況にある。求めているのは優秀な日本人ではなく、単なる優秀な人である。
著者 伊賀 泰代
キャリア形成コンサルタント 大学卒業後、日興證券引受本部を経て、カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネスにてMBAを取得。 1993年から2010年末までマッキンゼー・アンド・カンパニー・ジャパンにて、コンサルタントおよび、人材育成、採用マネージャーを務める。2011年より独立。
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章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.1 | 3分 | |
序 章 マッキンゼーの採用マネジャーとして | p.12 | 15分 | |
第1章 誤解される採用基準 | p.34 | 20分 | |
第2章 採用したいのは将来のリーダー | p.64 | 15分 | |
第3章 さまざまな概念と混同されるリーダーシップ | p.86 | 20分 | |
第4章 リーダーがなすべき四つのタスク | p.116 | 15分 | |
第5章 マッキンゼー流リーダーシップの学び方 | p.138 | 19分 | |
第6章 リーダー不足に関する認識不足 | p.166 | 19分 | |
第7章 すべての人に求められるリーダーシップ | p.194 | 16分 | |
終 章 リーダーシップで人生のコントロールを握る | p.218 | 15分 | |
あとがき | p.241 | 2分 |