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2012/12/08更新

「為替」の誤解 通貨から世界の真相が見える

188分

4P

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紙幣を刷れば円安になる?

円の価値が高くて困るなら、紙幣をもっと刷って希釈化すればいいと提唱する人が、一部の識者や専門家の中にもいる。彼らは「円高ドル安が進行しているのは、日本銀行の資金供給(金融緩和)の姿勢が米FRBと比べて消極的だからとする。

しかし、マネタリーベースの内の流通現金の量は、家計や企業の現金需要の増減によって決まってくるもの。日銀はあくまで受動的な立場でしかない。「紙幣をもっと刷ればよい」という言い方もよく聞くが、これも全く意味をなさない。仮に日銀が紙幣を発行しても、市中で何らかの理由で現金需要が増加し、それを受けて銀行や信用金庫などの民間金融機関が日銀の当座預金口座から現金を引き出すという具体的な動きがないと、紙幣は日銀の倉庫で死蔵されるだけである。すでに民間金融機関の当座預金残高は余剰資金で溢れ返っている。

また日銀が長期国債を買ってばかりいると、財政規律が緩むという副作用がもたらされ、最終的には国債の信認を毀損し、「悪い金利上昇」と「悪い円安」につながる。

円安になれば日本経済は復活する?

仮に1ドル=200円ともなれば、日本経済の基幹である輸出産業が国際競争力をつけて復活し、そこから波及して景気も上向くという淡い期待がある。しかし、ここまで円安が進むということは、日銀や日本国債の信用度がかなり低下していることを意味する。だとすれば、国債を大量に保有する日本の金融機関は多額の評価損を抱えて、たちまち危機に瀕する。さらに日本株全体の大幅下落は免れないし、金融システムも機能不全に陥る。これはあらゆる企業活動にとって致命的だ。

それに円安になれば、エネルギー関連をはじめとする輸入品のコストが猛烈に上昇することを認識しておく必要がある。今でさえ、原油価格の高騰や電力料金の値上げは企業経営を圧迫している。エネルギーや原材料の価格上昇は、中小企業にとって致命傷になるかもしれない。

経済成長すれば消費増税は必要ない?

経済成長すれば増税不要とする議論がある。世界経済の成長軌道に乗り、例えば実質1〜2%成長、名目で3〜4%の高い経済成長をした方が税収は増えると説く。むしろ増税は成長を阻害するから、今のタイミングで行うべきではないという。

しかし、名目GDPが縮小しつつある日本にとって、それはある種の夢物語でしかない。米欧と比べて、生産年齢人口が減り続けている日本は人口構造が全く違うし、日本の企業はいまだに護送船団方式のように過剰供給の構造を温存している。この違いを度外視して「米欧並みの成長可能だ」と説くのはあまりに現実感に乏しい。

消費増税は、日本の社会保障制度を維持するため、財政を債権するためにやむを得ない。さらに財政健全化のためには、消費税率を20%以上にまで引き上げる必要がある。